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ショスタコーヴィチ (作曲家・人と作品シリーズ)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 音楽之友社
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「ああ、なぜ、われわれの人生はこうも暗く、恐ろしいのか?」 ★★★★★
ショスタコーヴィチの評伝と作品解説(交響曲、弦楽四重奏曲、オペラのみ)。前者が4分の3余。作曲家の複雑で困難な生涯を見事に描いた評伝である。文章は平易で読みやすいが、p.6の「作曲家の曾祖父」「作曲家の祖父」は誤解されやすい表現であり訂正すべきだ。

国家に翻弄され、自由とは無縁な境遇で創造活動を行う苦悩から生涯解放されなかった作曲家の人生と、残された作品群とを考えるとき、「自由」が人間にとって如何に大きな恩恵であるかを思い知らされると同時に、偉大な才能にとって束縛は果たして足枷であったのか、それとも結果的に創造的活動の原動力であったのかと、私は読み進めつつ悩んだ。自由とは、才能とは、抑圧を受けて初めて輝くものなのか。

一方で、自由を「湯水の如く」浪費している日本人の絶望的な実態にも思いは及んだ。日本人は明らかに、自由を享受する作法を間違えている。無際限な自由は、人間には扱いかねる猛獣なのか。

個人の自由は衆愚の危険を常に孕み、今の「自由な」日本には何らかの荒療治が必要なところまで来ているようにも思える。しかし権力という怪物を檻から出すのは余りにも危険だ。衆愚は身のこなしだけは速い。犠牲になるのは有為な人材ばかりであろう。一例を挙げる。囁かれ始めた「今の腑抜けた若者を鍛え直すために徴兵制を」という発想こそが衆愚の暴論であることに、果たしてどれだけの人が気付いていることか。今なおナチを絶対禁忌とするヨーロッパの知恵を思え。

権力との困難な戦いの中で、作曲家にも何度か報われる瞬間があり、その記録は真に感動的である。私は何度か涙ぐんだ。日本人が今、曲がりなりにも手に入れている「民主主義」のありがたさを思うとき、自由と放恣とは違うのだと常に自戒することのみが、思想信条表現への権力の容喙を阻む唯一の方策なのだと私は考える。
歴史に翻弄された天才たち ★★★★☆
日本語によるショスタコーヴィチ評伝における嚆矢であり、幾多の先行研究を踏まえている分、おそらく有数のハイレベルな1冊。しかもコンパクトで読みやすい。
20世紀最大の芸術家といえるショスタコーヴィチは、ソ連邦の悲劇を生きた証人でもあるが、その「二枚舌」「二重言語」と言われたしたたかさによって生き延びた芸術家でもあった。
同業者をはじめ、多くの芸術家がテロルの犠牲者ともなった時代を生き延びるのは生半可なことではないととともに、断腸の思いや忸怩たる思いで変節を自らに強いざるを得なかったであろう。ネップ時代のルナチャルスキーが失脚せずに(ということはつまりスターリンが台頭せずにということと同義だが)、その文化政策が継続していれば随分とその運命は変わっていただろう。
ミハイル・バフチンやヴェデルニコフといった真性の天才たちももっと活躍したに違いない。
マヤコフスキーやメイエルホリドは一体どこまで到達しただろうか?
ショスタコーヴィチの晩年は、保守派への変節と取られたようだが、それこそ哀しき「三つ子の魂」と言えるのだろうか。最早、本能的な二重言語のような気がする。
作曲家ショスタコーヴィチの人生と作品を知る為の密度の濃い一書 ★★★★★
実に密度の濃い本です。ショスタコーヴィチの家系と生い立ちから、青年期、作曲家としての成功、当局との確執、芸術家としての苦悩、結婚、家庭生活、病気、そして死までを記述した、非常に内容豊かな本です。(医師である私にとっては、ショスタコーヴィチの闘病の様子が詳しく書かれて居る事も、興味深い事で、読みながら、彼を苦しめた「麻痺性の病気」は、一体何であったのか?を考えましたが、これは、良く分かりませんでした。これは、今後の研究課題だと思ひます。)特に、「死後の評価」と題された章(178-182ページ)では、1979年に発表されたソロモン・ヴォルコフ編の「証言」の真贋論争が、非常に分かり易く要約、解説されており、これを読めば、ヴォルコフ編の「証言」が、偽造文書であった事が、良く理解されるに違い有りません。又、「作品篇」(184-240ページ)の内容は非常に充実しており、ここに述べられたショスタコーヴィチの楽曲についての解説と分析は、ファーイの『ショスタコーヴィチ/或る生涯』には無い物です。ショスタコーヴィチに関心の有る方のみならず、ロシア・ソ連の現代史に関心の有る全ての方に、この本を読まれる事をお薦めします。(西岡昌紀・神経内科医)