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日本の中世国家 (岩波現代文庫)

価格: ¥1,050
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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“媒介としての法と政治”から見た『中世国家像』 ★★★★★
 “天下国家を論ずる”“社会のあり方”などの言葉を耳にすることが多いが、果たして“国家”と“社会”の違いは何だろう、或いはそれを識別する指標は何だろうか?
 かつて60年代に東京大学出版会から“日本封建制研究”として『中世の法と国家』『中世の社会と経済』の2巻の書物が刊行されたが、その緒言には次の記述がある。“(日本の封建社会の研究は)戦後目ざましい発展をとげたわけであるが、それは主として生産関係の面にしばられて、封建社会の構造と運動を明らかにするための有力な媒介である法及び政治の問題は、閑却された嫌いがあった”として戦後の日本史研究におけるある種の閉塞性の存在を指摘している。それは歴史学自らが持つ戦前の苦い経験に起因するトラウマによる“強烈な揺り戻し”の表れともいえる。
 がしかし、単なる社会経済の構造分析のみでは戦後歴史学が目指してきた“豊かな歴史像の構築”にはほど遠いと言えよう。
 本書はそうした中にあって緻密な史料分析に基づき、律令国家解体後の鎌倉幕府の成立及びその政治組織としての性質、そしてその完結性と未熟姓を“システムとしての法”及びその運用の側面から考察している。著者は日本の史料学・古文書学に関しては現在でも第一人者的存在であると同時に傑出した法制史研究者でもある。
 仮に“社会”を「生産という要素から見た場合の実態としての関係」と暫定的に規定するならば、“国家”は「オオヤケとしてそれに対する裏付けを与えるシステム」と言い換えることができるかもしれない。つまり現場は国家という後ろ盾を得ることによって正当な支配を行う根拠を手に入れることが可能となる。領民にとっての“お上”は自らの目の前にいる在地の代官であり、その代官も統治機構である幕府組織からの文書(=法)によって地位を保証あるいは根拠づけられているのである。
 こうした分析に基づいた歴史認識は私たちの実生活のなかでも“このことはあの歴史事象に似ている”と感ずることも多く、本質的な意味での『歴史に学ぶ』とはこうした“目には見えない媒介に着目する姿勢”だと思う。
歴史小説より数倍面白い ★★★★★
通勤電車の中で毎日2ページづつぐらいゆっくり読みました。専門書なので平安時代の官職名など読めない漢字が多く出てきます。注釈も含めて読むと30分で2ページ程度しか読めないところもあります。しかし、読んでいるうちに異様に興奮してきました。高校までの日本史の知識では、鎌倉幕府が出来たことで天皇の権力が全くなくなったという認識でしたが、鎌倉幕府の四代将軍は皇室の出身者であり、そもそも源頼朝の挙兵は王朝の以仁王の命令であったとは。武家の権力は天皇の権威があってこそであり、武家は必ず天皇の権威を必要としており、天皇や周辺の貴族の権力は、土地の紛争における過去の判例の継承など、行政実務能力に負っていたとは。今も昔も暴力だけでは支配ができなかったのです。読むうちに一人一人の貴族や武士が生き生きとよみがえってきて、その臨場感によって歴史小説の数倍は面白かった。