「移行期の社会」における「真実委員会」の活動、意義、限界などを検討
★★★★☆
近過去の大規模な暴力を乗り越えて民主的な社会を建設しようとしている国々、地域がある。南アフリカやルワンダ、中南米諸国、東欧など、総じて「移行期の社会」と呼ばれる。
本書は、このような「移行期の社会」が民主主義を建設していく際の一つの不可欠な手段である「真実委員会」の役割や限界を検討したものである。著者はこの分野の第一人者と言ってよい存在であり、前著「紛争後社会と向き合う」は非常に網羅的で極めて高く評価できる。ただし、前著は著者の博士論文が下敷きとなっていることもあって、やや値段が高く、叙述も難解な個所があった。
それに比べて本書は、コンパクトにまとまっており、読みやすい。とはいえ、前著を簡単にしただけの書ではなく、あらためて考察を進めている点も散見される。特に、「真実」についての検討は参考になった。世界各地における人権侵害への対応と今後の予防を考えていくうえで、ぜひとも見ておきたい書である。