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春の嵐―ゲルトルート (新潮文庫)

価格: ¥515
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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小説も、翻訳者との交流も美しい ★★★★★
前期の代表作と言える、人生の悲しみと喜びの混ざった作品。主人公は作曲家としては大成功するのだが、恋には破れる。いや、不幸な恋の経験を作品にぶつけたからこそ、良い曲を創れたのだろう。第二の主人公と言えるムオトは後のデミアンにも似ている、激しく力強い男である。

そして、翻訳者の高橋健二がヘッセを訪ねた時の手記も載っている。これは私のようなヘッセファンにはとても嬉しい文章だった。穏やかでユーモアのある、そして同時に鋭く厳しいヘッセの人柄がうかがえる。その後、ヘッセが高橋に送った手紙も短いが名文である。訳者紹介によると高橋は7回もヘッセを訪問したということだが、この交流が長く続いたことは二人にとっても読者にとっても幸せなことだっただろう。
何のために生きるのだろう? ★★★★☆
 初めて読んだのは中学生のときでした。冒頭からの数節を訳文そのままに暗記してしまったほど、繰り返し読み、愛した作品です。十年以上経った今でも暗誦できてしまう( ̄ー ̄;)
 小説芸術の歴史の下に眺めれば「秀作」という位置に留まるものかもしれません。初期のヘッセの作品は「詩人の書いた物語」の域を脱することができず、手法においても思想においても「甘さ」がある。それでも、綴られる言葉の美しさはすばらしく、その点では、世代を問わず読むひとを魅了してやまないと思います。私にとっては最高の青春小説でした。
 思春期になると、世界はその姿を変えます。生まれてはじめて味わう漠然とした孤独感。上を見たらキリがない理想と現実とのギャップ。些細なことにコンプレクスを抱いては悩む小さな自分。その自分自身と、矛盾に満ちた社会に対する憤り。そんな心の苦しみを誰にも打ち明けることのできないひとが、そっと開いて読むのがこの本です。
 大人になってから再読すると、自分がどれほど成長したか、どれほど未熟なままかをこの本は教えてくれます。ほんの数百円で買える安価な本です。私のはすっかり陽に焼けてボロボロです。それでも、これから先もずっとそばに置いておきたいと思う。偽ることなく誠実に、ずっとあなたの友達でいてくれる本ですよ。
最高 ★★★★★
ヘッセというと「車輪の下」を思い浮かべる人が多いですが、僕は、本書こそヘッセの代表作と言えると思います。値段も安いですので、文学好きの方は一読されることをお勧めします。

クーンは、若気の至りの暴走の末、片足が不自由になった音楽家です。その障害ゆえに、彼は内気になり、不充足感をモチベーションにして素晴らしい音楽を作っていきます。しかし、音楽は彼に真の喜びを与えてはくれません。

クーンを世間に認めさせたのが声楽家のムオトです。ムオトは、刹那的な刺激の中に喜びを見いだす、一見クーンとは正反対の性格です。しかし、彼もまた、刹那の快楽には、真の喜びを見いだせないでいます。
二人は、お互いの不充足感同士でつながり合い、親友となります。

彼らの前に現れるのが賢く気高い女性であるゲルトルートです。当然ながら二人は彼女に惹かれます。紆余曲折があり、ムオトとゲルトルートは結婚します。しかし、ムオトは、ゲルトルートを強く愛しているにも拘らず、自ら命を絶ってしまいます。死んでから2〜3日後には、ゲルトルートの元に、ムオトが死ぬ前に送った花束が届きます。

あと、忘れてはならない登場人物が、オーケストラのメンバーであるタイザーです。彼は、クーンやムオトとは正反対の人間です。彼は、足ることを知る人物です。彼は、自分の生活に十分満足し、幸福に暮らしています。

このレビューは、本書のおもしろさの1/100も伝えられていません。興味が湧いた方は、一読されて、これらの魅力的な人物が織りなす物語を堪能してください。きっと、「人生の幸福って何だろう」と深く考えさせられると思います。
孤独者へ・・・ ★★★★★
孤独者の悲歌。
不具者になったことを機に孤独へと沈んでいく主人公。そして芸術的創作によって唯一、慰めと高揚を覚える彼の前にムオトや、永遠の女性ゲルトルートが現れます。
孤独やそれに伴う恐怖、ささやかな期待やそれを残酷に裏切る絶望を詳細な心理描写で描き出し、精神の幸福を問う傑作です。
私は単純に「今、孤独です」と言う人に読んで欲しいと思います。どんなに寂しくても夜が怖くても生きていかなければならない。
その先に、はっきりとした答えや幸福がある訳ではなくても。それでも人は何かを得、何かを感じ続けるのだから。そんなことをおぼろげながら思います。
詩的な読みやすい作品 ★★★★★
後年のヘッセの作品が東洋文化と西洋文化の融合を果たし、哲学的色彩の濃いものだとすれば、この作品は自然や音楽を愛するヘッセの詩的な美しい作品と言えるでしょう。孤独な作曲家である主人公のゲルトルートに対する浄化された愛情と、音楽に対する情熱的な思いが丁寧に描かれている。ヘッセの持つ高潔さと清さが滲み出た読みやすい作品。後書きとして訳者が書き記したヘッセとの対談も興味深い。