本書を読んだあとは
★★☆☆☆
本書の「三戦現象」は、他の流儀、あるいはスポーツの「非三戦」姿勢で再現できますし、より簡単なコツもあります。
アスリートは自分自身の思考(試行錯誤)によって、普通の人間には不可能なことをやってのけます。武術、武道のモトは、アスリート(創始者、後継者)たちの経験と知識の累積です。
これに対して、科学的研究は、具体性と実験、再現性をテーマにしますから、本書のようにイキナリ「方法」や「手段」を提示はしません。そのため、多くの人々が科学を「役に立たない」と思い込んでしまうのです。
しかし、それは大きな間違いでして、「手段や方法を提示しない」ことは無知、無能を意味しません。科学的研究によって累積された現在のスポーツ領域からみますと「三戦現象」は簡単に分析できますし、より有効な方法も案出できるでしょう。
「三戦現象」は「多数ある方法(例えば合気現象)の一種」であって、そこで止まっていては進歩も発展もありません。なせなら、三戦現象(身体状態)を簡単に無効化する方法もあるからで、それらも武術では「技」の一部です。自分自身で、より有効な方法を模索することが本書を読むことの意義、であってほしいものです。
本書には、科学的な実験の精神(他の方法)が欠落しています。これは現代の書籍としては非常に大きな欠陥ですから、評価は低くなってしまいました。
きっかけとして
★★★★★
感銘を受けた。感じるということの重要性、
その感受性を高めるための呼吸や体の保ち方など。
脳(文)と体(武)はそれぞれが別物ではなく、一体なのだ。
という考えは、自分が日常感じていることを裏付けて
くれるようで非常に共感が持てた。
本書は、入り口に過ぎず、弟子として入門したくなる。
そんな本です。
目からウロコ
★★★★★
空手を10年以上経験しているが本書を読んで武道の動きの奥深さを痛感。
小林氏が冒頭に書いているように読者に分かりやすく書こうとしているものの、宇城氏の教えを正確に書こうとするあまり、どうしても武道の未経験者には理解の難しい部分があるが、格闘技や武道の経験者なら感覚的に書いてあることが理解できるはず。
日常生活の随所で本書に書いてある型の重要性や呼吸法を試してみたが、納得のいく結果であった。
本書で小林氏が何度も書いているように、武道は人生そのものといった感覚が少し掴めたような気がする。
宇城氏の著書は他にもあるようなので是非読んでみたくなった。
武道家に強くお薦めします。
入門書として
★★★★☆
新書版でコンパクトにまとまっており、コスト・パフォーマンス的にもよいと思います。冒頭の、慶応ラグビー部への指導の模様や、統一体にするために、足の裏に体重を感じる方法など、判りやすいです。
ただ、筆者の小林信也氏の、師匠である宇城氏への思いが過剰すぎるように思います。「カツラーの秘密」では、小林氏は、カツラをつけた自分の日々の悩みやトラブルを、あまり自虐的になりすぎずユーモアを交えながら描いており、好感を持ったのですが、今作品では、ちょっと真面目すぎるというか、自分を責めすぎているようにも取れます。宇城氏に空手を学ぶきっかけとなったのが、エピローグで書いているように、家族との葛藤から、仕事を理由に家族を顧みなかった自分を見つめ直したことだったと素直に心情を吐露しているところは、共感もできる反面、思い入れが強すぎて少し悲痛でもあります。
もう少し、淡々としていてもよいかと思いますが、真の武術を貫き通す師匠・宇城氏と、それを広める一助となろうとしている小林氏との師弟コンビの、次なる作品に、期待したいと思います。
著者の師に対する感謝を感じます
★★★★☆
著者がいかに現状のスポーツ界を憂えているか、それゆえに沖縄古伝空手の宇城師範に魅了されているかが、伝わってくる本です。
著者自信は、前書にわかりにくいかもしれない旨を書いてますが、そんなことはなく、非常に明確でわかりやすい本となっています。読むだけならば、2時間あれば通読できますので、誰にでも手にとってもらってしかるべき本なのではないでしょうか。身体に興味を持っている方には、是非一読をお薦めします。
ただ、著者の宇城師範に対する感謝の情が、宇城師範その人を知らないと少し理解できないところがあるかもしれません。それが残念。