長渕流フォークの確立
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30年のキャリアを語る上で、初期の名作と言える作品。ギタープレイもさることながら、世間を斜に構えた作風が見られるようになり、チンピラチックな歌詞が確立されるようになった。これこそ長渕の醍醐味であり、長年オールドファンに支持されてきたゆえんではないだろうか。
初期の最高傑作とも言える「顔」、業界人の態度を小馬鹿にした「白と黒」、このほか「もう一人の俺」「暗闇の中の言葉」と世間を斜に構えた曲が多く、ギター弾き語りもアルペジオやスリーフィンガーを駆使。歌謡曲みたいな「決心」「ヒロイン」も収録されており、ラブソングを随所に入れて決して拗ねた男ではないイメージづくりも垣間見える。
今さら長渕のフォーク時代を聞いてもあまり意味はないが、彼のキャリアを振り返るには最適のアルバムであり、長渕入門者にはおすすめの1枚としておく。
しかし、オールドファンからの苦言も一言。「顔」の歌詞にある「一つの山を〜」の部分。まるで今の長渕のような気がしないでもないが……。
乾杯だけではない本質
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前のアルバムの順子のヒットでさあ行くぞとばかりに制作された三枚目。乾杯と言う名曲も生まれて来ました。しかし乾杯は確かに名曲ですが、当時は残念ながら当たらなかったようです。それよりもこのアルバムの本質は暗闇の〜などに聞かれる自分を取り囲む音楽業界やなかなか認めてもらえない葛藤を振り絞るように書き連ね曲達にあります。確かに回りの人達に噛みつくような歌詞が目立ち、自分の事をもう少し振り返ったらどうなんだという思いもありますが、この辺が良くも悪くも個性ですから仕方ありません。なかなかヒットが出ない苦しい時代はまだ続きます。
10年以上
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わしは乾杯を聞いてから15年程になるが変わらずに思っていることがある。結婚式では掛けさせてくださいね剛さん。廃れないですよ名曲は。最近の軽い曲は聴いても聴き飽きる。やっぱり、魂の叫びですよ。とくに結婚式には。
名曲「乾杯」のオリジナル・ヴァージョンが聴ける3作目。
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後に録音し直されシングル化、大ヒットした「乾杯」。そのオリジナル・ヴァージョンが聴ける唯一の音源だ。1980年発表、通算3作目のオリジナル・アルバムで、今回、24ビット・デジタル・リマスターされての再発売となった。
まだフォーク・ソングの名残があり、ピアノやアコースティック・ギターが多く使われている。しかし、一番の違いは何と言っても「歌い方」である。引っ掛かりのある、しわがれた今の歌い方とは180度異なる、澄んだ高音が聴ける。アレンジは古いが、「乾杯」の世界観にはこの美しい高音の方が合っていた気がする。
歌い方は素直だが、歌詞はやはり長渕。自己主張の強い、ある種ワガママなくらい「自分」が貫かれた詞が並ぶ。この自我を昇華したところに、賛歌「乾杯」は位置しているのかな? そんな風にも思える。「乾杯」以外では、オープニングの「決心」と、「もう一人の俺」が印象に残った。
白と黒=チェスのようなアルバム「乾杯」
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後に世界的ヒットになる「乾杯」のオリジナルが
収録されたアルバム。長渕流ギター奏法が多種多様
に盛り込まれバンドサウンドもプラスされた新たな
境地を感じさせる音。それ故に?全体的に地味な
印象はあるが独特な雰囲気を持つ良質なアルバムだ。
琥珀色のコーヒーの湯気の向こうで白と黒のチェスを
打ちながら“詩”を考える長渕剛が見えるようだ。
「プロポーズ」では白く輝く希望の世界を唄い
「手のひら」では黒くて深い男女の悲しい性を唄い
「顔」では混じりけのない白い純粋な闘志を唄い
「もう一人の俺」では彼の内面の白と黒が
真っ向から向かい合う世界を唄い
「プライベート」では果てしなく白い愛の世界を...
彼のアルバムの中で「異色」であることは確かだ。
「乾杯」のオリジナルを聴くだけでも趣きがある。