華麗なる家族崩壊
★★★★★
きわめて重い現実とエゴイズムに加え、微妙な感情の機微が明確に描かれている。
踊子である母娘と、一見無気力な父、少々攻撃的な息子が、家族の構成要因。
仏像の手の形を、踊りで表現しようとする下りなどは、想像しただけでも、大変美しい。
ただ、一方では、非常に儚い現実が、平行して進んでいる。
父は一見無気力で、話が口先だけの様に捉えられている。
著者は、けっして、そうではないという事を、行間に臭わせている。
父は父なりの、現実的および心理的な苦労を「強いられて」きたのだ。
それを理解しようとはしないで、家族は父を半ばないがしろにし、攻める。
やむを得ないかも知れない。
現在にも通じる、現実的成り行きでもある。
バレエ音楽とともに、崩壊してゆく家族が、華麗に描かれる。
その儚さと、重い現実に圧倒される。
なお、巻末に三島由紀夫氏による興味深い解説が付記されている。
私個人としては、大部分は成る程と思い、唸らされ、一部では異なる感想を持った。
ただ面白いのは、三島氏が、この作品中の、ごく短い、美少年の登場人物の下りを賛美している点だ。
いやはや、、、。
川端文学の卓越した美と、現実の壁を感じさせられる傑作だ。