書き分け
★★★★☆
2002年に出た単行本の文庫化。
文庫化に際して、新仮名遣いに改められている。文字を大きく組んであるのも特徴。
平成11-13年に書かれた短文を集めたもの。ただし、多少古いものも混じっている。
本当に雑多な内容であり、日常エッセイ、受勲の言葉、鉄道乗車記、文学賞の選評、自著のあとがき、自衛隊での挨拶、結婚式での挨拶まで入っている。
面白いのは、日常や家族の話、遠藤周作や北杜夫など友人たちのこと、鉄道旅行記であった。のびのびとユーモアを持って書かれており、非常に良い文章だ。また、選評や他人の本の解説など、ひとの文を褒めるのも上手い。
一方で、挨拶文などはきちんと形式通りに書かれており、いささか味気ない。
文章の種類やシチュエーションによって巧みに書き分けているのが読みどころか。