まさに一陣の春風のような物語です
★★★★★
「名古屋をこの世の極楽に」
尾張藩主、徳川宗春の物語(下巻)です。
粋で、ファッションにはうるさく、かぶいたものが大好き。
執着のないカラリとした気持ちの良い個人の生き様。
御三家筆頭の大大名という雲上の身分ながら、
時の将軍と対峙することになっても独自の政治思想を持って本まで出版し、
人間の欲望を認めてそのうえで、国を民を治めようとした奮闘、
苦心が伝わってきます。
生涯日の目を見ないであろう部屋住みの身分、
そこから幸運にも小藩の藩主へ、
そしてまったく思いもかけず尾張藩第七代藩主へ
でもどんな境遇でも、
そこでやれることをめいっぱいやってやろう、楽しもう。
個人的には、そういうところに一番共感しました。
筆者のくだけた語り口はとても親しみやすく、
最近はあまり見かけない(と思う)、
われらが通春様は〜という書き出しが逆に新鮮でした。
松平通春18才、憧れの江戸への旅立ちからはじまった壮大な一代記。
最後は思わず名残惜しくなってしまいました。