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王妃の館(上) (王妃の館) (集英社文庫)

価格: ¥700
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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   直木賞作家、浅田次郎の長編ユーモア小説である。女性誌「メイプル」の1998年5月号から2001年4月号に連載された作品を、上・下巻に収めた。

   パリのヴォージュ広場で300年の伝統を誇る「王妃の館(シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ)」は、世界中の観光客あこがれの最高級ホテル。この15室しかないホテルの知名度を利用し、倒産寸前の旅行会社が企画した起死回生策とは、「王妃の館」に滞在するパリ10日間149万8000円の超豪華「〈光(ポジ)〉ツアー」と、19万8000円の格安「〈影(ネガ)〉ツアー」を同時に催行し、ツアーの「二重売り」によって月末の手形決済を切り抜けようというもの。

   しかしながら、両ツアーともに、参加者はひとクセもふたクセもある個性派ぞろいで、参加者たちが繰り広げる予想外の事態により、ツアーの二重売り計画は次々と危機にさらされ、破綻していく。トラブルの連続、突拍子もないギャグ連発のドタバタ人情劇は、エンターテイメント性たっぷりに楽しませてくれる。この現代劇の合間に、17世紀の「王妃の館」にまつわる逸話が、しっとりとした趣で織り交ぜられていく。

   現代劇の最後は、できすぎのハッピーエンドというのもホッとする展開だ。いわく、「光には影がなければおかしいし、光あってこその影なのだから」と。また、ときに登場人物に語らせながら、随所に散りばめられている著者の思想や社会批判がなかなか痛烈である。これが作品全体を引き締め、重みを与えている。(加藤亜沙)

浅田次郎の安心感に満ちた世界 ★★★★☆
浅田次郎の本はいつも面白い。たまにしか読まないけど、決して裏切らない面白さがこの作家の魅力だと思う。

本作では70-80年代を思わせるドタバタ劇を基底にして、16人の登場人物がそれぞれ隠し持つ人情ドラマと、ルイ14世とフランス料理の起源にまつわる歴史ロマン(作中作)という、浅田次郎の得意技を3つ組み合わせ、随分と贅沢な作品に仕上がっている。

登場人物は、それぞれとんでもない問題を抱えて歪んでいる。しかしこの普通ならあり得ないパリ旅行に参加して巻き込まれたドタバタ劇を通じ、抱えていたストレスから次第に開放され、大団円へと収斂していく。一つ一つのプロットにはあり得ない設定が目立つが、とりあえず目くじらを立てなければ、浅田次郎の安心感に満ちた世界を楽しむことができる。間違いなく、浅田次郎の秀作の一つ。
期待が大きかった分... ★★☆☆☆
人づて&レビューを見て購入しました。
面白い、と絶賛されていたので期待が大きすぎたようで
正直読んでいていまいち、でした。

まず設定がありえない。フィクションだから、と割り切ったところでも、
全く好感が持てない登場人物たち。
過去の話の場面はそれよりは多少面白いのですが、
その時代に焦点を当てた小説ほど興味深いわけではなく、文章もなんだか軽すぎて
がっかりでした。
お見事っ! ★★★★★
長年の浅田ファンとして数多くの作品を楽しませていただいていますが、私の中の一押し作品です!
あれだけ忙しく新刊を発表し続けながらもどうしたらこんなに斬新なアイディアがポンポンと浮かんでくるのか?

光(ポジ)/影(ネガ)ツアーの話だけでも一冊かけそうなのに、それに加えてルイ14世絡みの歴史物も加える力量には脱帽ものでした。
現在ツアーの軽快さ、歴史物のシリアスさが気持ちよくミックスされていて読んでいてもメリハリがあり、疲れずに2冊一気に読破。
読むかどうか悩んだらまず読んでみてっ後悔はしないはずっ。
作中作だけに作者の本領が ★★★☆☆
「王妃の館」はパリの超高級ホテル。倒産寸前の旅行会社がこのホテルに超高額と低額の2つのツアーをダブル・ブッキングで送り込むという話。添乗員は元夫婦で、しかも元妻は結婚前から上司の愛人。客も、世界を股にかける詐欺師、「プリズンホテル」を思わせる作家、金の使い道に困る程の成金、逆に借金から自殺を決意している夫婦、不倫の恋に破れヤケになっている女性など多士済々。これで作者が浅田氏なのだから面白くない筈がない。

筈がないのだが、ギャグが空回りするのである。右往左往する添乗員もオカシイというより、同情を覚えてしまう。それでも前半(上巻)はドタバタ風に話は進むのだが、段々話はシリアスになってしまう。そして、ホテルの老コンシェルジェが語るルイ十四世に纏わるロマンス(作中作と言える)に到って、作者が書きたかったのはこの作中作の部分だったのだと感じてしまう。他の部分とは力の入れ方が違うのだ。ここは、作者の恋愛・ロマン小説の手腕が発揮されている。

最後はご都合主義を総動員した形でハッピー・エンドに終る。残念ながら期待外れだ。本作に登場する作家ではないが、浅田氏も出版社にせっつかれて一作こしらえたという風にしか思えない作品。

浅田氏の作品としては並み ★★★☆☆
ではあるが、世間的には水準以上の軽いエンタテイメント。
いつもの通りの、多数の伏線を最後は膂力でつなぎ合わせる浅田マジックには驚かされるが、超高価ツアーと廉価ツアーに過去(ルイ14世時代)のエピソードまでも入れ込むのは少々無理がある。
個々のエピソードやギャグも並みのできなので、ときどき読むのがつらくなるときがある。