この名前からして一体どういう集まりなのか?と気になる短編集。私も最初は何やら怪しい話かと想ってしまった。
しかしこれは、アシモフが実在する女人禁制クラブをモデルに(内容は全く違う)作り出したクラブ。 弁護士、画家、数学者、暗号専門家・・・職業も興味もバラバラで、単に親睦を深めるための集まりなのだが・・・・月一度の会合の席で話がミステリアスな事件に及ぶや、各人の推理合戦と化す。この会話の面白さがシリーズ最大の魅力。そして、何故かいつもあっさりと謎を解いてしまうのは控えめな給仕のヘンリー! 謎解きも面白いが、勝手な推理を展開する面々に対して、見事に解き明かしてしまっても控えめなヘンリーの対比が面白い。しかも事件のバリエーションも豊富。アシモフの推理短編は傑作揃いで、本当に多才な人だと思う。
解説は有栖川有栖氏。この解説を『迷宮逍遥』(有栖川氏の書いた解説集)で読み、「そんなに面白いシリーズだったの!!」と慌てて読み始めたのだ。
このシリーズは現在まで5冊出ているが、アシモフは、「生きている限り黒後家シリーズを書き継ぐ」と宣言していた。既に故人となっているがあくまで「既刊5冊」である。今後も何らかの形でまとまるととても嬉しいのだが・・・
彼が編者の短編集『16品の殺人メニュー』は、食べ物飲み物を引用したミステリ集で、こちらも多士済済。 似たものでは、バーテンがヘボ探偵の持ち込む難事件をあっさり解決してしまう「三番館シリーズ」(鮎川哲也)がある。こちらもおすすめ。 何と、似た設定の2つの短編シリーズは洋の東西は違えどほぼ同時期に書かれていたのだ。