このヘンリーは、給仕ながら回を重ねるにつれ、立派な会のメンバー、「我々の中では一番の知恵者」とゲストにも紹介されるほどになっていく。それでも控えめなのは変わらない。
謎解きも面白いが、勝手な推理を展開する面々に対して、見事に解き明かしてしまっても控えめなヘンリーの対比が面白い。しかも事件のバリエーションも豊富。アシモフの推理短編(長編もだが)は傑作揃いで、本当に多才な人だと思う。
解説は鮎川哲也。ちなみに5の解説は有栖川有栖。師弟が仲良く解説で並んでいたりする。
なお、アシモフが編者の短編集『16品の殺人メニュー』は、食べ物飲み物を引用したミステリ集で、こちらも多士済済。
似たものでは、バーテンがヘボ探偵の持ち込む難事件をあっさり解決してしまう「三番館シリーズ」(鮎川哲也)がある。こちらもおすすめ。 何と、似た設定の2つの短編シリーズは洋の東西は違えどほぼ同時期に書かれていたのだ。