この本については、あまり翻訳が上手でないことも手伝って、書いてある内容以上に理解がしにくい気がします。
よくあるミクロ経済学のわかりにくいテキスト的な雰囲気も持ち合わせています。なので、ある程度の知識を
持った上で精読することが、十分な理解をする上で必要でしょう。
内容的には従来の経済学への批判が中心です。従来の開発経済学の「効用」「市場的アプローチ」などに対する論理的矛盾を
含んだままそれでも狭い範囲の中で分析を行なう「合理的な愚か者」を抽象度の極めて高い論理で批判します。
そこから先、それではどうするのか、という点については詳しくは述べられず、その後の著書に続く…という感じです。
100数十ページしかないため、難解ですがさほど読むのに時間はかかりません。また、GDPが開発経済の分析に
不充分だと証拠付けるインド・中国・スリランカ・ブラジル・メキシコの比較と、インド国内における市場分析に
あらわれない男女差別問題の具体例分析が補論として最後になされています。この本自体が古いためかなりデータが古いですが、
理解の大きな一助になります。