サンディ・デニーとリチャード・トンプソンは、それぞれ英国の生んだ最高のボーカリストとギタリストかもしれないが、本作では非凡なソングライティングの才能も予感させている。ふたりはそれぞれ2曲を提供し、詞と曲の織りなす時代を超えた音楽風景を聴かせる。トンプソンは、うっとりさせる「Genesis Hall」でアルバムの幕を開けさせ、「Cajun Woman」で猥雑(わいざつ)な遊び心をじめじめしたサウンドにもちこんでいる。一方、デニーは「Autopsy」と「Who Knows Where The Time Goes」を書き、前者はアーリージャズの影響が色濃く、後者は彼女がこれまで書いたなかでも指折りのすばらしさだ。
このアルバムの最後の鍵となるのが、バンドの未来を象徴する11分におよぶ「A Sailor's Life」である。この曲でバンドは、サンディが昔から知っていたフォークソングを驚くべきサウンドに生まれ変わらせた。そして、トンプソンのギターとエレクトリック・フォークミュージシャンであるデイヴ・スウォーブリックの熱く長いバイオリンの掛け合いがこの曲を締めくくっている。
この出来栄えにいたく満足したスウォーブリックはバンドのメンバーとなった。まだフェアポート・コンベンションの曲を一度も耳にしたことがないのなら、このまさに時代を超えたアルバムから聴き始めるといいかも知れない(ただし一度聴いたらやみつきになるかも知れないが)。(James Swift, Amazon.co.uk)