Moondog Matinee
価格: ¥943
1973年、ザ・バンドは岐路に立っていた。『ロック・オブ・エイジス』のコンサート・レコーディングでプロとしてのキャリア第1期の総括をすませたロビー・ロバートソンは、ポーランドの作曲家クシシュトフ・ペンデレツキに触発され、おもしろ半分に野心的なプロジェクトに手を出した。しかし、未知の領域へと分け入る代わりに、5人はクラレンス・“フロッグマン”・ヘンリーやプラターズ、ファッツ・ドミノらを思わせるオールディーズを再生したLPで、安ホテルで過ごした日々に再び耳をすますことを選んだ。ロバートソンのオリジナル曲が60年代後半のあの速さと正確さをもはや持っていないとすれば、カバー・コレクションというのは賢明な手である。リヴォン・ヘルム、リック・ダンコ、リチャード・マニュエルの3人は、そろってそのヴォーカリストふりを発揮した。チャック・ベリー(「プロミスト・ランド」)やボビー・“ブルー”・ブランド(「シェア・ユア・ラヴ」)、サム・クック(邦題「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」)らの名曲から選んだ古典的作品に挑戦しても、いずれもオリジナルからのプレッシャーによる力みは感じられない。この飾り気のない名盤に、2001年リイシュー盤ではアウトテイク6曲が加えられ、それがオリジナルLPからの10曲にうまくフィットしている。(Steven Stolder, Amazon.com)