これほどの本格推理エンターテインメント作品があるだろうか?
★★★★★
誘拐された老人が、逆に犯人達をアゴで使いその後のストーリーを描くという奇想天外な発想もさることながら、
その降りかかった不幸を自分の人生設計の一部に組み入れてしまう、見事な身代金受け渡しに至るまでのトリック
は今読んでも新鮮で斬新です。
一切の誰もが傷つかないこと、犯人達の人間性や、逮捕できなくても優秀な警部など、読後の清涼感に至っては
ここまでの作品は他に類を見ません。ミステリーとは言えないかもしれませんが、ミステリー好きを自認する方は必読です。
1/2
★★★☆☆
誘拐事件ながら軽快な喜劇タッチで進められるため、興味の対象はストーリーの展開とミステリーの仕掛けに集中していく。
人質自らが身代金を100億円に吊上げ、誘拐事件は前代未聞の規模に発展する。しかも、犯人は身代金の引渡しを含めて2度の接触を試みるのだが、事前に手紙でかなり具体的に接触方法を指定してくる。
読んでる方としては、この難題がどう解決されるのか著者に挑む気持ちで読み進める。なにせ第32回日本推理作家協会賞作だ。
最初の接触はまさに奇想天外。『そう来たか!』と脱帽させられた。しかし、最後の身代金の受け渡しは細部にわたりよく練られているが、奇想天外というほどではない。最初の接触の展開が素晴らしかっただけに、尻すぼみ感が残った。
柳川とし子刀自と戦後の時代
★★★★★
柳川とし子刀自(1896-1995)。和歌山県の富豪、山林地主。慈善家。1978年に起きた「虹の童子」誘拐事件の被害者(人質)としても知られる。
柳川家の当主として何不自由ないお嬢さんとして育ったが、若いころから小作争議をまとめるなどして信望を広げ、その名声と影響はやがて紀州一帯に及ぶ。戦争で夫と子を亡くしたこともあって、戦後は慈善活動に力を注ぎ、県民、とりわけ子どもたちから「柳川のおばちゃん(おばあちゃん)」として親しまれた。
刀自の薫陶を受けた著名な人物には、元和歌山県警察本部長の井狩大五郎、仏彫師の戸並健次、農政家の中村くら、作家の天藤真、映画監督の岡本喜八らがいる。
「虹の童子」事件後も長く健在であったが、1995年、白寿を迎えた翌日に柳川家の地所検分のために出かけた散歩中に息を引き取る。葬儀は井狩と戸並を共同委員長とする大掛かりなもので、地元のテレビ和歌山がヘリコプター数台を繰り出して終日中継、事件以来ひさしぶりに柳川家の力を全国に示す、しめやかにして派手な刀自好みのものとなった。
遺産の一部(一説に数十億円規模のものといわれる)は、刀自の遺言にしたがって、紀州の山林保護と児童福祉活動を目的とする財団法人「レインボーキッズ」(柳川英子理事長、井狩大五郎監査役)に寄付された。
なお、刀自の墓所と墓石には戸並の手による虹と仏陀を模した美しい文様が刻まれており、その芸術性は世界的に評価が高い。墓所一帯は景観を含めて和歌山県の指定重要文化財となっている。また、近くにはバス停が立てられ、事業の繁栄と一攫千金を願う参拝客が跡を断たない。
「虹の童子」事件については、天藤真『大誘拐』(創元推理文庫)が詳しい。
本当に面白い
★★★★★
これは本当に面白かったです。
自分が生まれる前の作品なのに、今読んでも尚色褪せないというか、
現代でも十分通用する内容の完成度の高さに脱帽です。
最初から最後まで間延びすることなく終始止まらず面白い。
これは本当にすごいと思いました。
こんなに人に勧めたくなった本は初めてかもしれないです。
身代金の要求方法、受取方法が見事
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身代金の要求方法や受取方法、受け取ったあとの逃亡方法など、実によく考えられていたと思う。450ページという結構長い作品だったが、続きが気になってあっという間に読んでしまった。特に、人質が生きていることを証明するためのTV中継での刀自の話は、誰もが応援したくなるような力強さがあり感動的だった。