「物質とエネルギーが等価である」とか「光には粒子としての性質と波としての性質がある」ことは高校の物理でも学んだ気がするが、頭で分かった気がしても日常目にするりんごが木から落ちるシーンからはとても理解できない概念である。ましてや、「物質は光の速度を超えられない」「時間は速度に依存する」などは想像も出来ないことだとあらためて思った。しかしながら、これらの結果は、観察された(一見すると矛盾するような)物理的現象を矛盾無く説明するために行われた理想的な思考実験によって導き出された結論である。
また、これらの結果がSF作品に影響を与えたり、人々の哲学的自然観に大きな影響を与えたのだと思うと科学の進歩による影響の大きさを改めて考えさせられる本である。
理系に興味のある中高校生には、ぜひ読んで欲しい本である。
最後の章は量子論の初歩的概念のはなし。アインシュタインの発見による光電効果が光の粒子説の復活をもたらしたことが強調されている。いっぽう光には波動として振舞うとしか解釈できないことがある。これらを統一して説明できるのが量子論となる。
量子論はこれまでの物理学の理論と異り、本質的に集団の確率統計的理論である。(統計力学における事情とは異る。)