巻頭を飾るカラー図版には、ゴーリー描くところのポスター、精巧なつくりの飛び出す絵本、あるいはカレンダー、ぬいぐるみ、スタンプ、ピンバッチ、T-シャツなどゴーリーグッズの数々。寡作そうな、秘密めいた作風の絵本しか知らなかった目には、意外に大衆性のある、ゴーリーの新たな像があざやかに見える。
編者濱中利信による、120冊の「Primary Books」(ゴーリー自身の、またはそれに準じるものとして発表された作品)カタログが圧巻。ゴーリーの膨大な作品の一端を、表紙のカラー写真と短い解説文でつぶさに紹介するこの労作は、奥深いゴーリー世界への魅力的な窓口となっている。濱中は、1999年にゴーリー紹介のホームページを開設した、日本でのゴーリー・マニアの第一人者。
その濱中に、既刊6冊のゴーリー本名訳者柴田元幸と、小説家でエッセイスト、絵本の翻訳も多い江國香織が加わった鼎談が楽しい。ゴーリー本の版元ニューヨークの伝説的古書店ゴサム・ブックマートの店主や、サンフランシスコ在住のゴーリー研究家によるエッセイほか、どの著者からも、読者をゴーリー・コレクターへと誘う、怪しく知的な風が吹いてくる。ゴーリーその人の顔写真もさりげなく一葉。これは貴重、見てのお楽しみ。
ひそかに濃く楽しんできたマニアには、ファン層が一挙に拡がりそうな、うれしくも不安なる1冊かもしれない。(中村えつこ)