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狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死 (中公文庫)

価格: ¥905
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論社
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一気に読めました。 ★★★★☆

男が惚れる男、というのは、こういう人物なんだろう。

しかし、純であればあるほど、人と衝突して、うまく世の中を渡っていけない。
こういう人物に光をあてて、本にしたのだから、おもしろくないわけがない。

一気によめる面白さです。

ただ、もう少し、文章が洗練されていればいいのに、と感じました。
森田勝と長谷川恒男 ★★★★☆
 まともな義務教育も受けず、町の山岳会ではバカにされ、金策に困って海外遠征から外され、そんな鬱屈した状態だった森田が名をなしていくまでの人生が描かれています。彼は卓越したクライマーだったそうですが、世界的に名をなした同時期のクライマー長谷川恒男のようなルート選択眼はなかったように感じます。実直に最短距離を行く、金ができたらずっと山にこもっている、ひたむきに全てを山に賭けた彼の性格が伺えます。同著者の「長谷川勝男、虚空の登攀者」を続けて読むと、同時代に生きたクライマーの光と陰が伺い知れて興味深いです。森田と長谷川は当然接点があります。そのため、両著は内容どころか文章もかぶっているところがかなりあるのが残念ですが。
 若い頃は、名を上げるためには第2登は意味がないと考えていた森田が、40歳を超えて挑んだグランド・ジョラスで長谷川に破れます。登攀しても第2登になってしまうはずの、グランド・ジョラスに再挑戦し命を落とすのですが、このころは既に山と己との戦いへと関心が移行していたのかもしれません。本当のところはわかりませんが、結婚もし子供もでき年齢も重ねる、人間は変わる、でも、根本的には変わらない、そんなことを改めて考えさせられる本でした。
現代が失ってしまった何か ★★★★☆
森田勝のような人生を今の人々は歩むことは出来ないと思う。決して一流の人ではない。
K2で一次アタック隊に入らなかったが故に下山してしまった下りなどを読んでも、彼が
現代の社会で受け入れられるとは到底思えない。

でも、僕らはどんなに渇望しても森田のような人生は歩めない。そういう意味ではとても
幸せな人だと思う。本作は非常に良く出来た力作だが、登山用語を多発しており、初心者
には読むのが辛いかも、という視点でマイナス1点にさせて頂きました。
孤独、しかし人を愛すが故の孤独 ★★★★☆
お馴染みの佐瀬 稔(著)のシリーズ。
長谷川恒夫などシリーズを通して他の登山家が登場するので、合わせて読むと登山家の対比や登山家同士の葛藤ややり取りが垣間見れて面白い。

自分のやりたいことをやり抜きとおし、一見究極のわがままにも見える彼の行動。
しかし、彼はひたすら自分の夢に没頭していく。
それが故に周りからは反発をくらい、山岳会にもなじめず、自身の信念を曲げてまでも他人と折れ合うことを妥協できなかった男ではあるが、決して人が嫌いになって山の世界に入っていったわけではない。
若い頃は棘があり癖があったが、後年には人々のことを思い性格もだいぶ丸くなったことからも、そのことがわかる。
絶えず妥協をして生きている現代人にとって、どこかで忘れてしまった何か大切なものを教えてくれるようだ。
究極の求道者 ★★★★☆
『神々の山嶺』の羽生丈二(ビカール・サン)のモデルとなった森田勝の話。
究極の求道者といって差し支えないだろう。
その一方で、純粋すぎるが故に人を傷つけてしまうなど、幼稚ともいえる人間性も記されている。
スポーツを志したことがある人なら憧れるであろう妥協しない姿勢に憧れる。その反面、家族を持つ者としてはどうかという疑問も同時に湧く。このような人物がいたこと自体、スゴいことだと思う。
モッティ書店 ★★★☆☆
 夢枕獏の大作「神々の頂」のモデルになったとされる人物、森田勝。人付き合い、集団生活が不器用なために社会に適応できず、山にすべてを捧げた孤高のクライマー。 アルプス3大北壁を単独で制したライバル長谷川恒男の影で、その純粋なまでの山に対する情熱は情けないけどカッコイイ!
千年書店 ★★★☆☆
『神々の山嶺』に登場する羽生丈二のモデル、と言われる、実在の登山家・森田勝の凄絶な人生。
山に憑かれるが余り世間に馴染めず、世間に馴染めぬジレンマからかまた山に向かう森田の言い知れぬような孤独感が、佐瀬稔の絶妙な文章の行間に滲み出ているような気がして、後半、森田が死に近い山行に向かう姿には思わず涙。