凄い人です。
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映画にもなった山口組三代目田岡組長の自伝です。山口組といえばやくざ組織の代名詞であり、日本人には良く知られた存在だと思います。今のやくざ組織がどうであるのかは知らないのですが、自伝で語られる山口組は、凡そ暴力団とは懸離れた任侠の友誼団体です。親に勘当を受けたり、失ったりしてぐれて行き場のない若者を引き取り、全うな働きが出来るように面倒を見るのが田岡組長の仰る「組」です。麻薬に対しては撲滅運動を展開し、国家繁栄を目指して運営を行います。組長は自ら仕事をもって子供を食べさせるものであって、子供が親に上納金を出すなどとんでもない、と語ってもおられます。日本のやくざ組織は、アメリカ人からみると非常に奇異なところがあって、堂々と看板を掲げ居場所を明確にしています。アメリカのギャングは誰が組織の人間かを探るのがまず大変です。日本は最初から居場所がわかっています。これは「組」の側に、自分達が犯罪組織ではないという自負があるからです。田岡組長は法律を守る人で、しかも一般市民には実に親切だったそうです。巷間伝わる、任侠の世界は消えゆく日本文化の一つかもしれません。昨今、企業や行政に不祥事が絶えませんがこれはどうしたことか。やくざには一般人の感覚と違うところもあります。面子を潰された時は生死の問題になり、戦争が始まります。これが一般人を恐怖に落としいれるのですが、麻薬を大学生が使うようになった現在を田岡組長はどう見ておられるでしょう。聞きしに勝るお人柄の現れた本でした。