チエちゃんと私
★★★★★
ばななさんの選ぶ言葉に癒されます。
安心できる、気持ちよくなれる、そんな感じです。
小説セラピーって彼女のための言葉なのかもしれません。
本当の「自立」とはこういう生き方かもしれません
★★★★★
42歳で独身のカオリさんとカオリさんの従姉妹でこれまた独身の35歳チエちゃんの同居を
軸にした物語です。
イタリア語に精通していて伯母さんが経営するイタリア雑貨店で働くカオリさんは、一見
キャリアウーマンっぽいのですが、カオリさん自身が求めているものは違う方向のもので、
その気持ちを頑ななまでに大切にしてきた女性です。そんなカオリさんはひょんなこと
から従姉妹のチエちゃんとの同居を始めます。
チエちゃんを大切に思う気持ちと同時に、同居するが故のチエちゃんに対する疎ましさ
なども書かれていて、逆にチエちゃんがカオリさんにとって家族同然、もしかすると家族
以上の関係であることが伺えます。
カオリさんに依存しているように見えるチエちゃんが実は毅然と「自立」していて、
そんなチエちゃんに依存していてまずいなぁと自分自身を省みているカオリさんも、
チエちゃんを本当に大切に思うということはどういうことなのか、自分自身は何を求めて
いるのかをわかっている「自立」した女性だと思います。
結婚・出産をすることや仕事に邁進してキャリアを積み重ねることは、一見「自立」して
いるように見えますが、型にはまっても自立していない人は少なくないのかもしれません。
独身であっても、子持ち専業主婦であっても、自分が本当はどのように生きたいのかを
見極め、毎日の生活でいかにその生き方に近づいていくかが、大変でも自分らしい生き方
なんだということを改めて教えてくれた小説です。「キッチン」以来文庫はすべて読んで
いますが、「N・P」「High and dry (はつ恋)」とともに三本の指に入る珠玉の作品だと
思います。
寄り添う
★★★★★
裏表紙にある通り、静謐な物語。
よしもとばななさんらしい、ほんのひとときで、永遠の感覚のする物語でした。
哀しい予感やキッチンや、初期の作品がお好きな方はきっと大切に本棚に並べるだろう一冊だと思います。