社会学の入門書には(というよりむしろこういった類の概説書には)大きく分けると2種類ある。1つには時代時代の理論家を取り上げて、開設するやり方と、大きなテーマを概説していくやり方と。
この本は後者にあたるのだが、社会学を初めて学ぶ人にはもちろん、まとまって理解できる良書であるし、各論ばかりをやっている(オレのような)人間にも、社会学の全容を思い出させてくれる本である。
ひとつひとつのテーマでは、ところどころ?な部分もあるにはあるが、豊富な引用と巧みな語り口、計算された展開で、飽きずに読ませてくれる。この手の概説書の中では、一番退屈しない本のように思える。
入門書以上のもの、と言った理由は、それぞれのトピックにおいて、著者の独自の意見のことである。現在までの理論の展開をふまえたかれの意見ははっとさせられるものも多い(しかし一方で、?の原因にもなっているが)。特に最後の現代社会の章で提示される意見は面白い。