Road to Escondido
価格: ¥994
J.J.ケイルはエリック・クラプトンのキャリアを特徴づけるソロ・ヒット「Cocaine」と「After Midnight」の作者だ。クラプトンはWWJD(イエスならばどうするをもじって、J.J.ならばどうする)式に自分というものを形づくることがしばしばだったから、このコラボレーションはもっと早くに成立してもおかしくなかった。だが、かなり巧みなプロダクションやベーシスト4人、ドラマー4人、ギタリスト5人、パーカッショニスト3人というサポート・ミュージシャンの長いリストにも関わらず、『The Road to Escondido』ではクラプトンよりもケイルのほうが目立っている。どちらかと言えば寡黙なオクラホマ出身のケイルが14曲のうち11曲を作り、彼のブルース、ジャズ、カントリーの低いつぶやくような声が、このアルバムのトーンを形成し、方向性を定め、クラプトンは尻馬に乗っている。オープニングの「Danger」はダスキーな雰囲気で、ふたりは典型的なケイルのスワンプ・グルーヴに乗り、タイトにうねる"スローハンド"クラプトンのソロへと突入する。深夜のジャズ・ブルース定番の素晴らしいバージョンである「Sporting Life Blues」ではリード・ヴォーカルを交替し、捉えがたいブルースの「Hard to Thrill」では神出鬼没のジョン・メイヤーが印象的に登場している。クラプトンが自身の作品でこれほどリラックスした、あるいは入れ込んだ音を聞かせたことは何年もなかった。完全に眠気を誘う音ではないとしても伝統的なレイドバックのケイルは、比較的活発なパフォーマンスで反応しているが、これはクラプトンという著名な競演者に合わせたのだろう。足踏みしたくなるミッドテンポの「Anyway the Wind Blows」でふたりがハーモニーを響かせると、ごく自然でのびのびとした結果が生まれており、もっと早くにコラボレーションが実現しなかったことが悔やまれる。名目上は、すでに地位を築いているスーパースターと組んだケイルが得をしたように見えるが、実際のところ、このコラボレーションはエリック・クラプトンの長年のキャリアでもっとも人を引きつけ影響力のあるルーツロックの作品となっている。--Hal Horowitz