面白かっただけに残念!
★★★★☆
三代それぞれのストーリー・キャラクターは非常に楽しい。ぐいぐい世界観に引っ張られます。
それだけにこのお話をまとめてくれるであろう和也の章は期待感が上がりまくりでハードルを高めすぎてしまったかもしれません。
縦軸として使われている事件の真相も比較的序盤で想像がつくし、
タイトルに「血」を入れるほどの「濃さ」を感じることはできませんでした。
うーん、とっても面白かったんだけど、マイナスひとつです!
優れた警官ミステリー
★★★★☆
三代に渉っての警官の血筋を辿りながら、職務に忠実な警察官の日常と、日常を脅かす謎と陰を描いていく。
このような人々によって治安が守られてきたのであろう。しかし一家ごと駐在所に住み込んで、近所と親しく交わり、銭湯にも出入りして会話を交わし、夫婦喧嘩の仲裁までした「駐在さん」は日本では殆どいないかもしれない。
歴史の流れの中をストーリーは進んで行くが,要所要所に緊迫感がある。
父と子という大きなテーマもある。全身全霊で駐在警官として生きていた父清二が、火事の最中に現場放棄したという汚名をきたまま、殉職ではなく自殺として処理されたこと。父が現場を放棄することなどあり得ない。何か重大な秘密が あったのだ。このことを心にわだかまりとして持ちながらも、子の民雄は警察官の道を歩み始める。優れた頭脳を持っていたことと、死んだ父の後を追って警察官の職を選んだことで、警察の信頼を得て、公安警察の潜入捜査官として働き始める。
しかし、組織に入り、周りを欺いて情報を集める仕事の中で、自分のアイデンティティを保つことの難しさの故に、心を蝕まれていく。
1、2代の警察官は、不器用なほどの誠実さを持ち、それが故に悲劇に出会うが、3代目和也はしたたかな強さを持ち、一筋縄でいかない世界に自らも策略を持って立ち向かって行く。
ミステリーの醍醐味
★★★★☆
面白かった。上下巻を一気に読み切った。
戦後の混乱期から現代まで、三世代にわたる警官の人生を描いている。戦前の警察から変わったもの、変わらなかったもの。労働争議、学生運動、バブルの時代。警官三代の眼から見たその時々が、特異な形で描かれている。
事件の謎が受け継がれ、深まり、更に新たな事件が起こる。五十年以上もの時間が流れ、終末部に至って、物語の座標軸が幾度も回転する。そのたびに、新たな構図の下に事件が再配置されていく。題材から受ける印象とは違い、極めて考え抜かれた知的な作品である。ミステリーの醍醐味が味わえる。
更なる望みを言えば、登場人物の葛藤が、もう少しでも良いから描かれていれば、と思う。
血は争えない
★★★★★
戦後直後の混乱期から昭和時代、平成時代の現在までの60年を親子三代が警察官として登場します。その時々の世相を反映したような事件や時代背景が面白く、戦後経済の縮図的な小説です。そして本書の本流は駐在官であった祖父の不可解な死の謎を親子が警察官として解明しいくというものです。警察官という完全なる村社会の中で生きていくことの難しさも非常にわかります。警察小説によくあるような事件の生々しさよりも、警察内部の組織で生きていく内部の生々しさが非常に新鮮で面白い小説です。
だいたいの筋が読めたと思ったら・・・
★★★★★
勘のいい読者なら、下巻を読み始めたところぐらいで、ほぼ先が読める。
しかし・・・。
まぁ読んでお楽しみください。
非常によくできた小説なのですが、伏線と思っていたところがたいした意味を持たなかったり
というちぐはぐなところ、例えば、23年組での給料の盗難など、もあり
肩透かしな面もありますが、
筋が一本通っている小説なので、読んで損はしません。