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ぼくもいくさに征くのだけれど―竹内浩三の詩と死 (中公文庫)

価格: ¥760
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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戦争を知らない世代がどう戦争を考えるか ★★★★★
 この本で初めて竹内浩三という人を知りました。私は昭和63年生まれで、昭和生まれ最後の世代です。戦争を知らない者がいかにして戦争を知るか(本当の意味で)、非常に考えさせられました。私も学校で習ったり、本を読んだりして知っているつもりにはなっていました。しかし、本当は全然分かっていないのだということに気付かされ、はっとしました。著者は本当に戦争を知るための、手がかりをこの詩人に求めたのでした。
 竹内浩三の詩を読んで思ったのは、やはり当時も現代にいきる我々だって、やっぱり同じ人間であるということです。戦争を知らない私たちの世代は、つい当時の人たちは異常で、自分たちとは違うと考えてしまいがちです。おくにのために、敵に爆弾を抱えて突っ込む世界は私たちにはなかなか理解できません。しかし、彼の詩や日記を読むと、そこには今の私たちと同じようなことに悩み、傷つき、喜ぶ人間の姿があります。そこにはおくにのために命を捧げる勇ましい姿はなく、弱虫で優しい心を持った青年がいます。彼のことばは、60年後の同年代の私の心にも強く響いてきました。これが当時の人も同じこころを持った人間なのだというなによりの証拠ではないでしょうか。
 この本においては、「どうやって本当の意味で戦争を知るか」という問題は未だ未解決になっているように思います。これから考えていかなければならない問題です。この本はきっとその最初の一歩になるでしょう。でも、もしかしたら、それは本当の意味では不可能なことなのかもしれませんね。しかし、それでも知ろうと努力することが大切だ。それが著者が訴えたかったことのように思います。
若者の不安 ★★★★☆
戦時中に思春期を迎えた若者の不安を伝える評伝ではあるが、今を生き抜かなければならない若者の不安も充分伝わってくる本である。浩三の、戦争という理不尽なものに呑み込まれつつも、自分を見失わずに行きようとした姿に、生きる指針を見いだす読者も多いのではないだろうか。一人の若者の肉声を、姉、友人、戦争体験者が守り、伝え、広め、を繋げていった結果、筆者の目に止まり、浩三の征った戦地に出向いてまでの情熱を持って書かれたこの本は、戦後60年の重みを持ち、かつまた、混沌とした今、明日への、忘れてはならないものを確かめさせる貴重な旗印でもあると思える。
あの時代に、素直に不安を綴ることの意味について考える ★★★★☆
 伊勢市出身の竹内浩三は23歳で戦死しますが、彼が生前書き残した数々の詩は戦後多くの人々をひきつけていきます。職業詩人であったことはない浩三の作品群はやがて様々な人々の手を介して書物の形で世に出ることになります。本書「ぼくもいくさに征くのだけれど」は、そうした書と出会った若き著者が、あらためて竹内浩三の足跡を辿ることによって戦争に対する思いを綴った一冊です。
 先月(2005年4月)、本書は大宅壮一ノンフィクション賞を史上最年少で受賞しました。その筆遣いは20代前半という年齢を感じさせぬほどの練達ぶり。ライターとしての技量は母親(ノンフィクション作家の久田恵)譲りなのでしょうか。

 浩三は、「骨のうたふ」という詩の中でこんな風に綴っています。
「がらがらどんどんと事務と常識が流れ
 故国は発展にいそがしかった
 女は 化粧にいそがしかった」
 戦時中に書かれたとは思えぬほど、戦後の日本を見透かしたかのような一節です。その眼力にまず驚かされます。

 出征する兵士を町ぐるみで「祝い」、「撤退」を「転進」と言いつくろう、そんな時代にあって、浩三は別の詩でこうも書きます。
「そんなまぬけなぼくなので
 どうか人なみにいくさができますよう」

 拳を振り上げて力強く反戦を言い募るでもなく、混沌とした時代に一人の青年として大きな不安を抱えていることを、浩三は素直に文字にしていきます。

 浩三の詩を初めて全国に紹介した本の編集にあたった人物がこう語る言葉に胸を衝かれました。
 「私たちの世代の二十歳までの間はね、ちょっと格好をつけて言えば、すべて自分以外の目的のために生きるということが当たり前だったんです」(169頁)。
 そのことの善悪は別として、そういう時代が60年前にあった。そのことがなにやらとても不思議と遠く感じられる今に生きていることを改めて考えました。

現代の若者が竹内浩三に出会って ★★★★★
 国のため、家族のため戦争に征くことに、疑問を持つことも許されない時代に生き、23歳で戦死した竹内浩三。戦争ははるかな遠い時代のこと、遠い世界のこととしか感じられない25歳の稲泉連。この二人が時を越えて魂を触れあわせてこの本が生まれたようだ。22歳で「日本が見えない」を読んで、初めて「戦争」を意識した稲泉さんが、松島こう子さんや竹内浩三の作品を伝えてきた人々への取材を通じて、若者らしい詩に素直な共感を覚えながら、戦争を肌で感じとっていく過程がたんねんに、また、あたたかい視点でえがかれている。HPを作っている私も紹介していただいて感激。