狂気が全編に漂うホラー短編集です。
正気と狂気の対比も鮮やかに、小林泰三いつも通りの世界が
繰り広げられています。
個人的には表題作の「家に棲むもの」と「五人目の告白」が
気に入りましたが、後半(「肉」以降)のアイデアがちょっ
とパワー不足で、全体としては標準的な作品でしょうか。
「酔歩する男」「兆」などの同氏の名作を読んだあとでは、
確かに物足りないかもしれませんが、ホラー作家小林泰三の
ど真ん中直球の作品集と言って良いと思います。
しかし、氏が書かれると何でも怖くなるのは、もはや出てく
るだけで笑いが起きる芸人のようなものですね。
脊髄反射で怖がりましょう。