恐ろしく、そして悲しい
★★★★★
主人公の少女が自我に目覚めていくに従って明かされる恐ろしい過去。
重々しい雰囲気の中、気づくとこの濃厚な作品にひきこまれ、あっという間に
ラストに向かいます。押しつぶされそうな世界の中に、多くを書き込まずその状況を知らしめる
作者の筆力に唸りました。
ラスト近くの、土砂降りの雨の中、悲しみにくれる少女の姿があまりにも印象的な情景で私の心に
いまだに深く残っています。
生命とは何か。人間の尊厳とは何か。絆とは何か。
ホラーの根底にある人間の悲しみを描いた傑作。
ありきたり
★★☆☆☆
「本」はまあまあだった。
表題作に関して。豚の臓器で気を病むのなら、金属やプラスチックの機器を埋め込んだ人の心理はどうだというのだろう。まったくもって想像がつかない。
研ぎ澄まされた混濁
★★★★★
小林泰三氏の本は読者の意識を混濁させる危険物である
この著作に於いては「人獣細工」と「本」にその危険性が顕著に表れている
「人獣細工」は主人公がそうしたように、読者に痣を探索させようとする
身体、感覚、意識……人が持つとされる物を抽象し漂白させようとする
とても危険である
「本」、今手にしている物が紛れも無いそれであるかのような錯覚を覚えさせる
架空である事を読者に切願させるとは、なんて悪趣味なんだろう?
著者の悪趣味は読者を決して安全地帯の傍観者にしておかないことだ
現に安全地帯は既に蝕まれている、その本によって
と、かような濁りを読者に提供する小林氏の才
それが研ぎ澄まされたものであることは言うまでもあるまい
いたずら
★★★★☆
異空間にリアリティと論点を付け足すことによってこのイタズラな設定を面白くしている。
まるで数式を説くような「本」では定義的なことを無視しているかのような内容である。
初めてこのかたの作品を読む方でも短編集なので読みやすいと思う。
ただそれだけ内容が間隔なく押し寄せるので印象付けられるだろう。
この本によって小林ワールドへ入門するといいと思う。
不気味です。
★★★★☆
どの話も不気味な感じでした。
でも思った程グロテスクでは無かったです。
気味が悪いと言った方が適切な気もします。
面白くて、とてもよかったと思います。でも、表題作の、「人獣細工」
は少しだけ難しいかも知れません。