普通に面白いけど?
★★★★★
僕は彼の作品のグロテスクな描写が嫌いだ。吐き気がするとかそういうわけではなく、単純に退屈だからだ。いつもグロ描写が始まると読み飛ばしていた。で、今回の作品の表題作はグロ描写が皆無であった。彼の哲学というか、人間の錯覚をズブリと射抜かれたような気がして「なるほど〜」と感心した。SFホラーといったところか。面白かった。
はて人間は?
★★★★☆
全体の短編を通して「生きてるとはどういう状態なのか」「人間はたんぱく質のかたまりなのか」
「人間の尊厳とは」など、そのような問題を提起する作品が多いと感じました。
京極夏彦の「姑獲鳥の夏」にあったような、
「私たちが5分前に、今までの人生の記憶を植え付けられ、ふと出現した訳でないと、なぜ言い切れるのか」
という疑問を延々繰り返される感じ、というか。ふとした、駅のホームで電車を待ってる瞬間や、
友達と笑い合って、ふと「あれ、この子だれだっけ」と思う瞬間など、
脳が一瞬止まる感じがずっと続く感じです。
薄気味悪いけど、そこにある種の真実もある気がして、すごく面白いです。
非日常のこの感覚を物語にまで昇華させたことで、読んでてグングン不安になります。
それすら癖になったらそれは、この作者の目論みに、まんまとはまったということです。
確かに普通になった気がする
★★★☆☆
他の方のご意見同様、普通っぽくなった気はします。
というか洋画で出て来そうなシーンといおうか「さよなら銀河鉄道999」の命の火のカプセル製造シーンといおうか、そういった印象で不気味さのカラーがこれまでの著者のカラーとは異なるという印象はあります。
でも十分に不気味だし移植を受けていない自分が正しいのか移植を受けた女性が正しいのかパラノイアに陥っていく様はありがちな描写とはいえベースがベースだけに不気味さを増していて楽しめました。
スプラッタ物は小説も映画も好きではないのですがデビュー作以来、氏のモノだけは別です。
自分の存在自体の不気味さ
★★★★☆
全体に,小松左京や筒井康隆のショート・ショートのような軽めの作品が多かったが,表題作「脳髄工場」は,なかなかよかった。
人工脳髄を付けられた人間の言動は,本当にその人間の自由意志に基づくものなのか? 人工脳髄の送る信号が人工的に作り出したものではないのか? 主人公は,あくまでも自由意志に基づいて生きる人間でいたいと願い,人工脳髄を付けることを頑なに拒んでいたが……一種哲学的なテーマのようでもあるが,本作品の結末は結構意外なものだった(小林泰三ファンなら予見可能だったかもしれないが)。こうして「自由意志」に基づいて本を読み,レビューを書いている私だけど,でも,本当は……というような不気味さを感じた。
あの独特の絶望感が
★★★☆☆
長編から短編まで、彼の作品を読んできました。
いつまでもまとわりつく後味の悪さが大好きだったのですが、
小林泰三氏の作品の持つ絶望感をこの作品集は楽しむ事ができませんでした。
次の本に期待したいと思います