「本物の音楽家・詩人・画家は万に一」
という中国の古い諺があったようにおもう。
アーティストの九分九厘は虚飾や虚勢だということ。
その本分は、はぐれ者であり、見世物であり、
狂言回しであり、世でもっとも苛烈なサービス業でもある。
金子氏が本物か否かは、いまもって分からない。
ただ、ひどく猛烈だということだけは、よく分かった。
数々のエピソードを読むうちに、
こんな人間にはなれない(なりたくない)こともよくわかる。
凡人は平凡に暮らすこと。奇人はほおっておいても奇人になる。
それにしても、あくがれる。
いま読んでよかったと、思った。
20歳になる前に読まなくてよかった、とも、思った。