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下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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推理と葛藤 ★★★★★
 本書はノンフィクションのジャンルに入ると思いますが、読んでいく感じは下山事件の取材をめぐる心理小説(作者の葛藤)という風です。
 事件から半世紀過ぎ、事件そのものが風化していく様相の中で、新情報、事実をもとに個人(作者)が真実を追跡していく、その道のりの困難さは明らかです。本書のような構成、叙述をとることは苦肉の策とも考えられますが、作者の筆力によって逆に魅力になっている面もあると感じました。
フィクションへの彷徨 ★★★★★
「A」「A2」の森達也さんが戦後まもなくの下山事件を扱った本。森さんの著者はすべて、「真相」をずばり指摘したつもりになって安心する、ということから程遠いのがすばらしい。過去は決定的に過ぎ去ってしまったのでたどり着くことはできない。しかし、それでも追及せずにはいられない。。。すばらしいです。しかも客観的に事実を見極めるというメディアにありがちな鳥瞰的、傍観者的、無責任的な態度への徹底的な違和感からくる、森さん独特の主観へのこだわりと日本戦後史観。安いミステリーの読者のように、ナゾの提示と「真相」の解明がほしい方は、森さんと一緒に取材して別の本になっている二冊をごらんください。

ドキュメンタリー映像作家の森さんはつまり、たどり着けない「真相」そのものではなく、むしろ「真相」をフィクション化することのよって、それが意味するもの、その手触りや歴史的意義へと迫る。作中にでてくる元NHKの女性記者を主人公にしたドキュメンタリー映画の製作などその最たるものです(この映画製作自体には、女性を無知なままにしておいてその「無邪気な」取材過程を男たちが映画に撮るという、知の階梯の問題やジェンダーの問題がありますけれど)。森さん当人はあくまで「ドキュメンタリー」にこだわりたいようですが、根底にあるのはフィクションの力への信頼です。

本人がフィクションへと向かいつつドキュメンタリーにもこだわっているため、文章が無駄に錯綜している感は否めません。また、森さんの戦後の歴史観(特に日米関係)も甘いです。しかし「フィクションへの彷徨」こそが本書の最大の魅力。取材する対象が取材者の思いとは別にあるわけではない、という当然のことを教えてくれます。「やらせ」批判から本当の「真相」へというありきたりな道でなく、それさえ別の「やらせ」を作るだけだというメディアの本性を引き受けること。メディア関係者必読。
ドキュメンタリーは嘘をつく、とはいうものの ★☆☆☆☆
この作品に「彼」として登場する柴田哲孝氏が『下山事件 最後の証言』で書いているが、森、斎藤茂男、柴田、そして柴田のご母堂が誘拐に使用された車種について話すために集まったときの模様を、森達哉は完全に作り替えてしまっている。もちろん自説に合わせるためであろう。なるほど、森がいうとおり「ドキュメンタリーは嘘をつく」。一般に、何を取り上げ、どのように語るかで、どこまでもフィクションでしかありえないという「理論」はそのとおりになるだろう。しかし、では、あからさまな「捏造」「歪曲」が、「ドキュメンタリー」という看板において許されるのだろうか。分かりやすい「理論」が、ジャーナリスティックであることを自負する作品のもつ価値や信用を地に落としてしまう単純な居直りに繋がるのであれば議論の意味がないように思う。「A」の作者である森氏には、地に落ちないための矜恃こそ示して欲しかった。森氏を尊敬する分、この作品はひどく残念である。
一人称で下山事件を語る3冊 ★★★★★
下山事件は、禍々しく、暗く、深い森です。
私たちが暮らす平成の現在、
その森について「僕」と云う一人称の視線と語り口で、
ほぼ同時期に3冊が刊行されたことは奇跡かもしれません。
いずれも既に文庫化されていますが、
ちなみに単行本での出版順は次の通りです。
2002年「葬られた夏―追跡・下山事件」諸永裕司著 朝日新聞社刊。
2004年「下山事件」森達也著 新潮社刊。
2005年「下山事件―最後の証言」柴田哲孝著 祥伝社刊 。
諸永氏は朝日新聞記者、
森氏はフリーの映像作家、
柴田氏は小説家。
それぞれの立場と思いから書かれており、
むろん、それぞれに独立した作品ですが、
濃密な関連があります。
一冊でもお読みになったら、
ぜひ、3冊すべてをお読みになることをお勧めしたい。
蛇足ながら、
当時の時代背景や政治状況、事件そのものについて、
事前に、松本清張氏の「日本の黒い霧」収録の「下山国鉄総裁謀殺論」に
目を通されれば、より、内容を理解しやすいのではないでしょうか。

著者を取り巻く人間関係こそミステリー ★★★☆☆
下山事件は歴史の教科書で見ただけ。
この本で初めて「何が謎なのか」知ったような素人のため素直に楽しんだ。
ただ、事件の謎解きの部分は面白いのだけど、ちょっとかっこつけた文章
(女が感極まったり)はいらなかった。
しかしそれより面白いのは、著者と情報提供者と各マスコミとの戦い。
誰がほんとうのことを言ってるのだろう??さて、ほかの2冊も読まなきゃ♪
という意味で、面白かった。