死に至る病
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三成の熱烈サポーター島左近視点で話が進み、大方の読者を「困った御仁」三成を放っておけない石田贔屓にしてしまう「関ヶ原」下巻。家康の会津討伐を機に挙兵した後も島津惟新入道を怒らせたり、慎重を期しすぎて宇喜多秀家を閉口させたりと、はらはらさせられます。朝鮮の役で加藤清正らの無謀な戦線の拡大を断罪した張本人でありながら、伊勢や丹後の空き城を攻めるような無駄な戦力分散(大坂への道中にある大津城は仕方ないにしても)をするのも謎です。
そんな三成に急遽味方した幼馴染み、大谷吉継。知勇兼備で人望も厚く、秀吉に「百万の兵を率いさせたい」と云われた戦上手でもあります。しかし今は癩病で病篤く、崩れかけた肉を包帯に包み、目も僅かに光が分かるのみという状態です。そんな重病に侵されながら命を賭して会津と家康の調停に向かう途中、三成に長男の後見を頼まれて訪れるのです(子どもみたいな三成が、初陣に出掛ける年頃の子の立派な親だったという軽い驚き)。親友に後見を頼まれて喜んでいた吉継は、それが実は反家康挙兵勧誘の口実だったと知り、憤りつつ挙兵の無謀を説きます。しかし、やがて説得が不可能だと悟り三成に加担します。「百万の将」吉継は、三成の負けを期しながらも友に殉じようと、悲愴な決意をするのです。
吉継の西軍加担はどこか「死に場所を求める」匂いがあり、彼が病でなければ果たして三成の元に残ったかという疑問はあります。それでも彼の最期は美しく、「死の美学」のようなものを感じました。それは、敗軍である関ヶ原西軍に今なお多くの人が惹き付けられる根底にあるものだと思います。
余談ですが、(筆者の創作と思いますが)三成の愛読書は源平盛衰記で、源頼朝と自分を同一化していた、というくだりが、社会的には立派な大人でありながら、少年漫画のヒーローに熱狂する現代のエリート男性像に似た不釣り合いな幼稚さを感じさせて、妙に生々しく感じました。
勝者と敗者の間で
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石田三成を主人公として、豊臣政権VS徳川政権という政治ドラマが描かれています。
なぜか、石田三成と自分の性格が異常なほど似ており、
司馬さんが石田三成を優しく酷評する記述に、
まるで、自分が司馬さんから指導されているような感覚にとらわれながら、読み進めました。
・高く純粋な理想を持つがゆえに、視野が狭くなりがちで他者との対立も絶えない。
・真面目で理想主義者であり、他の思想を許容することができない、思想的潔癖症。
・「こうあるべきだ」という観念主義から物事を考える。
・好き嫌いをもって人に対応してしまい、無駄に敵を増やしてしまう。
ようは、大人になりきれない子供なんですよね。
自らの考える正義を貫くためには大人になりたいものです。
最終的なゴールを明確にしたなら、どんなことでもやる覚悟を持つ。
その大切な目標一点に絞り込み、あらゆる手段を尽くす。自分をすら犠牲にもしないといけない。
自分のプライドを捨てることなんて当たり前。時には、顔を見るのも嫌な敵とも仲良くし、使える部分は使う。
一人ひとりに自らの理想を語り、自分に有利な時勢を創り出す事も大切でしょう。
・現実主義で物事を認識
・好き嫌いでなく、実利・寛容をもって対応し、味方を増やす
・時勢には逆らわない(逆らえない事を認識し、謙虚になる)
自らの正義を貫くためには、”勝つ”事が必ず必要です。
でも、自分以外の者のために、自らの信じる正義を貫こうとして負けたなら…。
その事が、本著の核心だと思います。
大きな日本の方向転換のいくさ・・・関ヶ原!
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「関ヶ原」3巻すべてを読み終えた。
当然のことだが、「関ヶ原の戦い」は今の日本にも繋がる大きな日本の転換のいくさだ。
その転換期の様々な出来事を見事に書き上げている。
・徳川家康の見事な政治的な動き、
・石田三成の官僚的で冷淡すぎるところはあるが、まさに滅私奉公の行動
・黒田長政、大谷吉継、宇喜多秀家、小早川秀秋、上杉景勝、福島正則、島左近らの
自らのお家の継続のための行動、自分の生き様を完遂するための行動
これらの出来事をとても魅力的に、そしてわかりやすく、描写しており、どんどん読み進める事
ができる。
この一冊だけで、「関ヶ原の戦」とは何かという事をつかめるのではないか?
特に、この小説を読んでみて
石田三成という人物は、文官武士と言われているが、どうしてどうして、そこら辺の勇猛な武士よりも
よっぽど男気があり、「義」を重んじ、本当の武士と言える人物であったんだ と司馬遼太郎は
是非とも言いたかったのではないか と感じている。
ただ、
徳川家康に対抗できるほどの器量(人を引き付ける魅力、心の広さ、愛嬌)が欠けていて、
西軍→東軍への裏切りが続出してしまう。
この裏切りにより、結果的に豊臣の世が終焉し、その後二百数十年近く徳川家の統治のおかげで
日本に平和が続いたという事は、きっと日本にとって一番よかった事と思うと
歴史の面白さを感じてしまう。
振り返って、現在、自由民主党から民主党に政権が変わるところである。
この政権交代も後々 とてもよい転換であったと思う事ができるとよいと感じている。
涙なしには読めない下巻最終章
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関ヶ原を読む事により 石田三成という人間を少しだけ知る事ができたように思います。関ヶ原の戦いで破れた光成が唯一信じた義という信念が当時の武士の中には無く、これを農民与次郎大夫の中に見つける。その時の光成の心を思うと涙がでます。そして、この小説のクライマックス 黒田如水と初芽との会話が光成の関ヶ原における役目を、秀吉亡きあとの豊臣家のあり方を全て物語っていると思います。関ヶ原の戦いで小早川が西軍を裏切らなかったとしても、たとへ西軍が家康を破ったとしてもおそらく徳川家の天家は変わらなかったでしょう。ただし、光成が関ヶ原の戦いで家康と堂々と戦い負けて行ったことで豊臣家が滅びて行くけじめを天下に示す事ができたと思うのです。
20万人が雌雄を決する最終巻
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東軍諸将が功を争うように次々と城を陥とし、家康もようやく江戸を立ちあっという間に岐阜に現われます。間者も放たない三成はこの行軍スピードに驚き狼狽します。そして籠城策をとらずに関ヶ原の地で大会戦に臨みます。その数、両軍合わせて20万。
関ヶ原では、東西各諸将の戦いぶりや死にゆく様が淡々と描かれます。三成が下痢を催してしまうのも哀れを誘いますが、なんといっても見所は小早川秀秋の裏切り。後世までその代名詞として語り継がれることになる裏切りは、一進一退の攻防だった戦いの行方を決定することになりました。
また、敗戦が確定的になった後の三成の行動も印象的です。あえて腹を切らず、家康打倒への思いだけで生き続けようとする執念、捕縛されてから処刑までの間の高潔な立ち振る舞いは、それまでの三成の印象を少し変えてくれる感じがします。
全編を通して、出てくる大名とそれぞれのエピソードも多く、秀吉の死から関ヶ原までの時期をざっと一眺めするには、司馬本のなかでも最適の作品です。登場する大名に個別にスポットをあてた司馬作品もあるので(黒田如水「播磨灘物語」長曽我部盛親「夏草の賦」など…)、興味のあるかたは連読するとより楽しめると思います。
父親が欲しがっていた本がすぐに届いたの…
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父親が欲しがっていた本がすぐに届いたのでよかったです。本人は待ちに待っていたので、喜んでいます。
安価で助かりました
★★★★☆
安価で助かりました