暗躍する島左近
★★★★☆
家康を遥かに凌ぐ全国規模の戦略眼を持ちながら己の足許さえも見極められない危うさと、非情を謳われながらも恩情に厚い一面、不正への憎悪と裏腹な潔癖。
「困った御仁だ」
と云いながらも島左近は随所に微行し、「困った主」三成の為に暗躍します。
家康に「賭けた」黒田長政や秀吉に「賭けた」如水と違い、三成の敗北を半ば前提とした彼の奔走は、正に「生涯を懸けた」男の「最後の道楽」であり、三成の夢に一命を投じてやろうという、半ば自棄っぱち、半ば自己満足に近い自己犠牲的精神に満ちています。
「殿は鋭い、殿に比べれば家康は如何にも鈍だ。しかし、新しい時代を切り開く為には或る程度の鈍重さが必要だ。斧は鈍だが破壊力がある。剃刀は確かに鋭いが、ひげを剃るくらいの役にしか立たないのだ」
不出来な主を髭剃り呼ばわりしながらも何故、左近はそこまで肩入れしようとしたのでしょうか?
左近に限らず、牢人上がりの多かった石田家中の家臣は、皆忠誠心が厚かったと云われています。牢人は今の言葉でいえば、武士の失業者、一度社会的に死んだ人間です。一度社会の底辺を味わった男たちにとって、三成の融通の利かない真っ直ぐな性格、非情なまでの潔癖さ、傲岸不遜にも映る才智、行政への情熱、己の利得を図らない清貧は、或る種形而上学的な美意識を持つ「志」は、社会や現実と相容れないと分かっていても、眩しく映ったのではないでしょうか?
彼らにとって、勝利を望みながら暗殺を望まず、あくまで正々堂々たる大決戦を夢見る、聞き分けのない少年のように見果てぬ夢を見る戦下手な主は、左近を始めとする石田家臣団のカタルシスだったと考えるのは云い過ぎでしょうか?
また、三成は不正を憎んで人を嫌うことが多い一方で、人の才を愛し、自分に仕える牢人たちの才を高く買っており(実際、俸禄も弾んでいた)、人に認められることで自尊心を回復し社会的に再生した彼らが主人に、志を同じくする「同志」として力を貸してやりたいという想いもあったのかなと思いました。
初芽との青くさい交情は三成の初心な感じを表現するのに一役買っているとは思いますが、市井の庶民の秀吉観を描く為なのか、何故か「切支丹の遊女まりあ」(何で切支丹名を遊女名にするの?普通隠すんじゃないの?)なんてオジサンサービス的な場面が長々あって少し中だるみの感じがあるので☆4つ。
ただおもしろい
★★★★☆
敗者は負けるべくして負けたという司馬遼太郎の歴史感で書かれていますが、読みやすくて面白い。
関ヶ原に関わる諸大名のエピソードに触れる第2巻
★★★★☆
家康の誘いにのり、いよいよ三成が伏見城を攻めで、関ヶ原決戦にむけた天下分け目の戦いの火蓋が切って落とされます。
東軍(家康がた)は、その周到な準備の甲斐あって、かの有名な小山での軍議で、秀吉恩顧の大名をことごとく味方につけることに成功。家康が各大名の性格を熟知したうえで、巧妙に心理的な仕掛けをして自分優位の状況にもっていく様子がひとつの見所になっています。
また、本巻では、関ヶ原に参加した主な諸大名について、それぞれ項をたてて、東西いずれに属すかを決めるまでの様子やエピソードを紹介していきます。その描写はさながら、関ヶ原参戦大名のカタログのようで歴史好きにはたまらないでしょう。名前をあげれば、毛利輝元、吉川広家、安国寺恵瓊、細川忠興&ガラシャ、島津義弘、長曽我部盛親、黒田長政&如水、小早川秀秋、…などなど錚々たる面々。それぞれにドラマがあって楽しめます。興味ない人にとっては全くつまらん名前の羅列なのでしょうが…。
最終巻に向けて、主なプレイヤーの紹介のような雰囲気のある第2巻です。
「世間は、欲望と自己保存の本能でうごいている」(本文から)
★★★★☆
島左近、宇喜多秀家、上杉景勝、直江兼続、鳥居元忠、長束正家、大谷吉継、
細川忠興、長曾我部盛親、小早川秀秋、藤原惺窩、島津惟新入道、相良頼房、
黒田如水、福島正則、真田昌幸、堀尾忠氏、山内一豊などなど、
「関ヶ原」の役者がどんどん現れる。
一人ひとりが丁寧に、個性的に描かれている。
敵か見方か半信半疑、誰もが己を考える。
「義」であろうが、「利」であろうが、
己である。
とても面白い。
各大名の動静と、それへの働きかけが現代ビジネスにも通じます
★★★★★
文字通り、天下分け目の戦いとなった「関ヶ原」の戦いについての文庫3分冊の2冊目です。
これまで、この本を敬遠してきた理由として、もともと家康があまり好きでなかったこともあるのですが、歴史の本で、勝敗がわかっている関ヵ原の戦いについて、ある種、チャンバラ小説的に、長々と書かれているのを読ませられるのもいやだなあと思っていたことがあります。
ただ、実際には、関ヶ原の戦いに至るまでの、各大名の思惑と動静、それら各大名に対する家康側、三成側の働きかけが、小説の中心となっています。従って、第2巻目になっても、戦いの場面は出てきません。
確かに、大人の家康陣営に対し、三成の働きかけは、幼稚な所があるのですが、ある意味、その巧拙は、現代のビジネスに通じるところもあり、人心を掌握するためにはいかにすべきかという観点から、面白く読めました。
これから読むのが楽しみです。
★★★★★
これから読むのが楽しみです。
探していたので助かりました。
★★★★☆
探していたので助かりました。