家康に対する共感は湧いてこない
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歴史小説を読むと、その主人公に共感を抱くのが普通ではないだろうか。しかし、本作品を読んでいても、徳川家康に対する共感は一度たりとも湧いてこなかった。武力よりも政治力、武士と言うより政治家、という面が強く出ているからだと思う。関が原の合戦も、つまるところ政治力の勝利だったと言えるだろう。判官びいきのせいか、逆に石田光成に対する共感が湧いてきてしまう作品である。
(これは上・中・下巻を通してのレビューです。)
作家司馬遼太郎から有能官吏へのオマージュ
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河出のMOOK(司馬遼太郎―幕末・近代の歴史観 (KAWADE夢ムック))に書いてあったと思うのですが、司馬氏は知る人ぞ知る官僚好きだったそうです。
ちょんまげ裃姿で開国し、日本がたった数十年のうちに日清・日露戦争に勝利するまでの東洋の大国となった背景には、多くの有能な官吏たちの
「国を作ろう、国を動かそう」
という情熱と努力と犠牲(政治家、軍部との摩擦など)があり、その後、第二次世界大戦の焼け跡からの復興にも国民の先頭に立つ彼らの確かな力がありました。『関ヶ原』は、そんな歴史に名前を遺さない国作りの裏方への司馬氏の偏愛が炸裂した作品であり、その意味で、極めて近代的な小説だと云わなければなりません。
つまり、三成vs家康は官僚vs政治家、三成vs七将は官僚vs軍部に読み替えられるわけです。
同著者の『覇王の家(覇王の家〈上〉 (新潮文庫))』の他の方のレビューにもありますが、司馬氏は「模倣主義・封建的考え方、自己抑制などの日本人の気質は徳川家康の(悪)影響」と考えていた節があります。その証拠に、司馬氏の作品に『江戸時代』そのものを扱ったものは少なく、江戸期の作品でも、江戸幕府的には中枢でも主流でもなく、先鋭的であるが故に周辺人に甘んじなければならなかった人々(あるいは異端者と呼ばれるような人々)が主人公のものが多いように思われます。
作品を読み進めるうちに読者のなかに湧き起こるのは多くの場合、家康に対する嫌悪でしょう。それはおそらく、筆者自身の家康=江戸時代への嫌悪が感染しているのだと思います。
つまり、この作品は「関ヶ原」を近現代の「政治」を批判した作品ともいえるし、江戸時代以前から続く「日本人気質」のようなものへの当てこすりでもあるわけです。
理屈は抜きにして、名著です。
読みましょう。
歴史の点と点がつながる
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歴史に興味を持つきっかけとなった本。
著者は、歴史上の人物のキャラクターを明確に定義し、
エピソードなどを交えながら、深く描ききっている。
時代が右に振れるか左に振れるか分からない、
非常に不安定な局面で、登場人物たちの
駆け引きが非常に面白い。
「関ヶ原で家康が勝って幕府を作った」
程度の認識しかなかったが、
その背景にあるドラマに引き込まれた。
特に面白いのは、
この戦の因縁が、江戸時代の長い時間を経て、
薩長を中心とした倒幕の動きに繋がっていること。
そういった因果関係を知ることが歴史の面白味であり、
この本は、それを教えてくれた。
数年に一度は再読する本。
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浪漫とドラマがたくさん詰まった作品。
日本中を巻き込んでの謀略や権力闘争や裏切りなど、
とにかくドラマチックなことがこのひとつの合戦につまりまくってます。
それらが丁寧に書かれています。
読後は、石田三成と島左近贔屓になること請け合いです。
三成の人心掌握の稚拙さや頑固さや現実感覚の無さなど、欠点がしっかり描かれており、
それが彼を愛すべき武将に魅せています。
そんな彼に苦言を呈しつつも、最後まで支える島左近の格好良さにも痺れます。
そして、実際に関ヶ原を訪れてみたくなります。
関ヶ原はあまり開発されていない為、当時の風景と地形が残っており、合戦の様子をイメージしやすいですよ。
壮大すぎるドラマ
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司馬遼太郎の戦国四部作の第三弾。
言わずと知れた関ヶ原の戦いを描いた本だが、
上中下巻の3冊あるなかで、
実際の関ヶ原の戦いは、下巻の後半にしか出てこない。
しかし、戦いに至るまでの、
徳川家康と石田三成との知恵比べが面白い。
石田三成は、上杉家の直江兼続と組んで、
東軍をはさみうちしようと画策する。
さらに、信州の真田昌幸などと組んで東軍の進軍を阻む。
徳川家康は上杉家に対して伊達政宗を差し向けると共に、
西軍のうち毛利家や小早川家などに対して内応を呼びかける。
東軍と西軍、
双方とも誰が寝返るとも分からぬなかで戦闘がはじまり、
結局、小早川秀秋の寝返りによって西軍は総崩れとなります。
しかし、よく知られている結末の舞台裏には、
こんな壮絶な策謀があったのかと、驚かされました。
これから読むのが楽しみです。
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これから読むのが楽しみです。