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ひょうたん (光文社時代小説文庫)

価格: ¥596
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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味わいがある ★★★☆☆
父親が倒れ、鳳来堂という古道具屋を継いだ音松だったが、商売に身が入らず博奕ばかり
していて店を傾かせてしまう。そんな時、将来を誓い合った男に裏切られた傷心のお鈴と
知り合い、ふたりは所帯を持つ。ある日、音松は橋から身投げしようとする男を助け、家に
連れ帰った。その男の抱える事情とは?表題作を含む6編を収録。

どの話も江戸を舞台にした、人情味あふれる話である。「ひょうたん」や「織部の茶碗」の
ように、地道な商売を続ける音松・お鈴の真面目な人柄を描いた心温まる話もあるが、
「びいどろ玉簪」のように、心がしめつけられるような話もある。虐待される子供たち。
そして、哀れな行く末。現代にも通じるとても切ない話だった。「貧乏徳利」にはラストで
泣かされた。音松とその友人たちとの固い友情は、どんな状況になっても決して変わること
なく続いていくだろう。ひとつひとつの話に味わいがあり、しかも、6編はひとつにしっかりと
まとまっている。面白い作品だと思う。それにしても・・・。作中でお鈴が作る料理は、とても
おいしそうだ。一度でいいから味わってみたいものだ。
池波正太郎へのオマージュを感じる ★★★★★
お鈴と音松夫婦の営む古道具屋を舞台に、
市井の人々の人生が交錯する連作時代小説。

面白かったです。
何よりも、
宇江佐作品としては、
乾いた価値観が背景に見られ、
ときに残酷な結末もある。
人間の嫌な部分も描き切っていて、
今までの作品にない新しさを感じた。
また料理の描写が充実。
毎回江戸前の素材が登場する。
個人的にははまぐり汁が美味そうだった。

こうして見ると、
本作、何だか池波正太郎へのオマージュなのかと想像させるのだ。
当然、ほのぼのした作風のコアは不変なのだが、
そこに今までにない、池波タッチとでも言うべき味付けがされている。
しみじみと「ほっこり」 ★★★★★
冒頭の一話に出てくる柚子味噌大根は「ほくほく」としていて、実に美味しそうだ。
それぞれのお話に出てくるお総菜は、どれもあったかくて懐かしい。
お話も、そうだ。
手作りの和食が「ほっこり」と暖かいように、江戸の人情が心に沁みる。

いい話です。どうぞお手に取ってご覧ください。
やっぱり人が好き ★★★★☆
火曜日に買って帰りの電車から読み始め 木曜日の帰りで読み終えました。
通勤時しか本を読まないのですが 宇江佐真理さんの作品はスイスイと進んで行きます。
短編が6編。古道具屋の夫婦が軸になっています。
近所、親子、兄弟との係わり合いが現代では考えられないようだと思いつつ
日本人の根底にはこんな豊かな心情が隠れているんだろうなぁと 仕事や人付き合いで
付かれた心がホッとさせられるそんな思いで読みました。
各編にでてくる美味しそうなお菜。今度作ってみようかなんて思ったりもしました。
最終編で思わず目に薄涙がにじむ出来事が。
やっぱり人が好きでいられそうです。
江戸に息づく熱い人情と心意気 ★★★★☆
父の遺した骨董店を賭け事で潰しかけた音松。
将来を誓い合った男に捨てられたお鈴。
そんな二人が寄り添って立て直した古道具屋に、ある日、浪人から一振りの刀が持ち込まれた。
調べてみると、最上大業物の名刀だった。音松は浪人に1両を融通した……。
底抜けにお人よしの夫婦が営む古道具屋を舞台にして、江戸に息づく熱い人情と心意気を、情緒豊かに描いた連作6編。
今の世の中、「人情」に触れてほっと一息つくほど救われた気持ちになる時はない。
是非、一読をお薦めする。