中の宇宙外の宇宙
★★★★☆
初めて読んだ大島弓子の本です。初大島世界としてはちょっと難しかったので星4つですが、これは感覚が合う人にはかなりすごい作品集だと思います
中に入ってる短編の一つ「ジキタリス」に出てくる「ジキタリス」とは、登場人物の1人が「眠ろうとして眠れず、目をつぶっているときにまぶたの裏にふいに現れるもやもやとした模様」につけた名前です。私も幼いときはあの模様をただ見つめて(?)いた時がありました。目を閉じているはずなのに見えるこれは何だろう、今自分は何で何を見ているんだろう。そんな素朴な不思議や不安を抱えながら生きていた頃のことを思い出しました。
大人になるに従って、生きることに慣れ存在することに慣れ、良くも悪くも鈍感になってゆくものですが、この本には、ちょっと変わった日常の風景に混じって、物心つくころには去ってしまう不思議で不安定な世界が広がっています。味わい深い一冊だと思います。
いつまでも心を震わせ続ける、優しく痛々しい作品たち
★★★★★
「ジキタリス」「秋日子かく語りき」など、大島弓子が作家として最も充実していた80年代後半の傑作群が収録されています。中でも表題作「ロングロングケーキ」は、僕にとって大島弓子の永遠の最高傑作。この世界は現実なのか夢なのか? もしも最愛の相手と夢の中で出会ったら? 無理矢理テーマを書き出せばそんな感じなんだけど、読み返す度に戸惑いと発見のある、難解な作品ではあります。SFの好きな人なら、レムの「ソラリス」を思い出すかもしれません。でも何よりも、主人公の青年「コタ」が、愛する相手と再び出会うために〈現実の外へと覚醒〉して、あてどない旅へと出かける瞬間の描写には、いつも心が震えます。できれば大きい版の単行本で読んでほしいなと思いますが。。。