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夢魔の標的 (新潮文庫 ほ 4-13)

価格: ¥460
カテゴリ: 文庫
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こわいです。 ★★★★★
話は、日常の、ほんのひとこまから始まります。先が本当に読めないです。最後にはどうにかなるんだろうな、ということを考える暇がないくらい、こわくなります。気がついたときにはもう巻き込まれているんです。短編の名手がみせる、最高の長編です。アイデアに舌を巻きます。
星野久作。 ★★★★☆
星新一、異色の長編フィクション。が十八番のショートショートをそのまま拡大した様。知性的で寓意的なストーリー、軽妙な文章。星ワールドにどっぷりと浸っていられる幸せ、これぞ長篇の醍醐味。

ある腹話術師の相棒の人形クルコちゃんが、勝手に喋りだすという話。クルコちゃんの意志は腹話術師の男に背く、しかしその声は男の口から発せられる…。言うまでもなく、ここにはアイデンティティー(=自己同一性)の問題への深い洞察が有る。話は裏次元からの世界征服計画がどうのというSF的展開へ到るのだが、それを含めても、実際ぜんぶ主人公の妄想に過ぎないのではないかという視点で読むことのできるのが秀逸。…己の狂気への疑念は、晴らすことができない。肯くことも否むこともできない…。そう㡊??う観点で読むと、文章の裏手に、夢野久作『ドグラ・マグラ』ばりの、自分への不安感のようなものを読み取ることができる。そのさい星新一一流の乾いた文体が夢野久作のドロドロした文章とパラレルであるという意味でこれまた功を奏する。…ただし結末がちょっと凡庸というか、一件落着してしまうのが物足りない感。惜しい。しかし多分、これでいいのだ、だって星新一だから。