男女五人を見る作者の目は、かなり平等で、誰か一人に偏るということがありません。男性作家だというのに、女性たち、とりわけ富子の心理描写が秀逸で、舌を巻いてしまいます。
鋭い観察眼による、無駄のない見事な文章にのせられ、あっという間に終幕まで連れてこられます。