親鸞は成仏できたか。
★★★★☆
情熱的仏教徒が多数登場するのは鎌倉室町時代である。しかしこの時代、仏教は人を救っているのだろうか?権力闘争で人を殺しているのではないか?
一向宗本能寺派の蓮如は組織を築き、民衆の団結できる場を提供した。そして、この団結は蓮如の制止にかかわらず、一向一揆に発展する。たとえば真宗内の勢力争い。守護との対立。権力に結びついた日蓮宗徒からの焼き討ちである。
ところで、この混迷の中、信者は悟りを得たのだろうか?生涯において、弟子をとらず、教団を作らなかった親鸞。そして弾圧と貧窮の中、彼は往生した。一向宗による加賀の国の支配を親鸞は望んでいなかっただろう。人の平等を彼は説いているが、民衆が団結して一揆を起こすことを願っていなかっただろう。「悪人と呼ばれる貧しい人々であっても貴族と平等だ」と彼は説きたかっただけだ。なぜなら善人と言われる貴族が救われるのだから、悪人こそ阿弥陀仏にすがり救われるべきだと説教したかったからだ。
つまり親鸞の教えをはずれて、一向宗は一揆の道に進む。そして多くの体制に不満を持つ者に利用されていくのである。信者の救いを求めた親鸞は成仏できたか?不本位な一向宗の興亡を、本作は十分味わえる作品だ。