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サーカスの息子〈上〉 (新潮文庫)

価格: ¥51
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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おじさんは、どこの人なの? ★★★★★
インドが舞台の、登場人物の大多数が(国籍は様々だけれど基本的には)インド人という作品です。

作中に出てくるインド人は、大雑把に分けて二通りです。
一方は欧米で教育を受け、普段はカナダに住み、数年に一度インドへ来る主人公の医師ファルークや、ヨーロッパとインドで二つの顔を使い分ける俳優ダーなど、インド人でありながらインド人でない人々。
もう一方は、インドで生まれ、インドに暮らし、決して出て行くことのないインド人たち。
後者を代表するのが、サーカスの人々です。

物語の主な舞台は、主人公が愛してやまないサーカスと、会員制高級クラブ「ダックワースクラブ」。
話の縦軸は二十年前に始まり今に続く連続殺人事件。
これに、前者のインド人たちの、行き場所のない帰属意識が絡みます。

アーヴィング作品は初期の頃のほうが好きで、「未亡人の1年」「第四の手」「オーウェンのために祈りを」あたりは、何かちょっと入り込めない感じでした。
この作品も実は上巻の途中までは(話がすぐ横道にそれ、なかなか先へ進まないので)あまり面白いと思っていませんでした。
が、登場人物それぞれの背景が明らかになり、相互関係がわかってきたあたりから、俄然面白くなってきます。
事件解決に向けたこの下巻は、一気読みでした。

レビュータイトルは、ラストシーンで主人公が通りすがりの子供から投げかけられる台詞です。
この問いに正しく答えようとすると、子供には理解不能の複雑な答えになってしまう。
そこで主人公の答えは「おじさんは、サーカスの人だよ」。

複雑な物語ですが、この一言がすべてを語っています。
飽きのくるアーヴィング ★★★☆☆
アーヴィングの作品は今まで4つ読みました
最後までちゃんと読んだのは「ガープの世界」と「ホテルニューハンプシャー」
途中で飽きて止めたのは「オーウェンのために祈りを」とこの本です

どんなものでも、本当にいいものは「2つ」なのではないかと最近思います
漱石も本当に面白いのは「猫」と「坊っちゃん」だし
ヴォネガットも「スローターハウス5」と「タイタンの妖女」の2つが面白いし
スピッツも世間で評価されているのは「チェリー」と「空も飛べるはず」くらいだし
ジョジョも面白いのは3部と4部だし
池袋西武屋上のうどん屋もうまいのは「冷やしおろし」と「あったかいかまたまうどん」だし
大学も週2日くらいがちょうどいいし
祖国 ★★★★★
舞台はインド、主要登場人物は、整形外科医兼覆面脚本家のファルーク、映画俳優のダー警部(ジョン・D)らだ。
この長編物語は、多くの小さな話題を織り交ぜながら進み、緩慢さはなく、読み進む事が、大変楽しい。

映画の盛んなインドでの、ダーティヒーローのダー警部とファルークの関係はいかなるものか?
妙な脅迫を受けたり、連続殺人事件が起こったりするが、その真相は?
といった、数々の疑問が物語を盛り上げながら、それぞれの事象が、複雑に絡み合う。
その複雑さの背景に、インドという国の混沌ぶりがあるが、描かれるのは、インドのごく一面だ。

ここで描かれる、インドの一面は、性別を超越している。
同性愛や法律で禁止されている性転換は日常茶飯で、HIV感染が、深刻な問題として、取り上げられる。
この問題が、ダー警部にも降りかかるのだが、ファルークと彼との関係を思うと、非常に切ない。

物語全体は、かなり国際的だ。
そして、ファルークの心理が何度も揺れるのであるが、物語全体を通して、ファルークの祖国は、一体どこなのか?
と、彼自身も悩み、その一定の結論が、エピローグで示されるのが印象的だ。

彼は「サーカスの人」なのだ。

サーカスを中心に扱った物語ではないが、読了すると、タイトルに、成程と思わされる。
また、著者が度々こだわる熊は、この物語では、一行しか登場しないが、代わりに?象が登場する。

物語全体がまるでサーカスだ。
著者渾身の力作だ。
サーカスの息子であるということ ★★★★★
面白かった。ジョン・アーヴィングという作家の、巧みさはさることながら、このあたたかさ。
どっちつかずのファルークだが、双子にむけた言葉の端々や、“ダー警部”に対する情熱に、滑稽さを笑う前に純粋さに胸を打たれてしまうような、悲しいような愛情を感じる。
インドについての本ではない、これはインドに生まれた完璧なインド人でありながらインド人ではない男の物語。それはファルークでありダーである。そしてラフルも、サーカスの息子であったような気がします。
派手ではないけれど、混沌とした、色々なにおいの混ざりあう傑作。
私は「ガープ」よりも好き ★★★★☆
どこに居ても居心地の悪い医者の物語には、ある種の共感を覚えた。インド人にもカナダ人にもなりきれない医者、母親に捨てらた映画俳優、40歳近くになってもまだ迷い続ける宣教師、夜の街を徘徊する小人、みんなどっちつかずで宙ぶらりんだ。物語の主な舞台となったインドに実は1ヶ月ほどしか滞在しなかったという作者が実に4年の歳月をかけて練り上げた複雑に絡み合う人間関係、途中唐突にサスペンスの要素を帯びる起伏に富んだストーリーは読み応えたっぷり。星5つにしなかったのは最後が少し物足りないように感じたからだが、時間をおいてもう一度じっくり読み返したいと思う作品。