図説や写真でより理解が深まります
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「逆説の日本史1」を読まれた方は特に、このビジュアル版を読むと新しい発見があっておもしろいと思います。「逆説の日本史1」で井沢氏が、古代史に関しては意見が今後変化する可能性を示唆しているのですが、その予告通り、氏の意見が変わっている点が記述されているからです。また「逆説の日本史1」の図説としても活用できると思います。「魏志倭人伝」に記されている邪馬台国の生活がわかり安く図説されていたり、現在宮内庁によって治定されている古墳の航空写真が載っていて、形がいびつで説に無理があるのが一目瞭然だったりで、古代史ビギナーでも史料をわかり安く解読できたり、現在の学説や通説、宮内庁説の問題点を知ることができます。もちろん「逆説の日本史1」を読んだことのない人も、日本史を学ぶ導入本として楽しむことができると思います。最後には「逆説の日本史紀行」完全ガイドと題して、古代史跡巡りの案内もされています。遺跡の案内や、現在に続くお祭り、歴史にちなむグルメなども紹介されていて、取材に力を入れている点が感じられます。
旅のおともにおすすめ
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諸星大二郎が描いた卑弥呼のイラストが掲載されています。天才・手塚治虫をも唸らせた伝奇漫画家の筆によるものとあって、高貴と妖艶さを湛えた卑弥呼像に思わず息をのみました。
「逆説の日本史」シリーズは歴史を楽しくひもといてくれますが、大部なだけに一巻を読み通すにも体力がいります。新シリーズ「ビジュアル版」は、いわばオリジナルのサブテキストという位置づけなだけに、ポイントが整理されているうえに美しいイラストや写真も助けて、目も頭も疲れさせません。
大手町マルコ氏は《厳しくいえば、かつて逆説だったが、10年前に「定説」となり、ところが20年たった今や、覆されるべき古い「定説」となっている、という印象です》と、怨霊をめぐる井沢氏と歴史学者の論争に触れています。これは見当違いな指摘です。
歴史学者の「怨霊の発生は奈良時代以降」という説はけっして新しいものではありません。井沢氏は、古代に大陸からプレ怨霊信仰が日本に伝わり、出雲大社が建立されたのも怨霊信仰ゆえであると説いています。歴史学者はこれを論駁できてはいません。
本のサイズといい、厚さといい、2泊3日の小旅行用のバッグに忍ばせるにはちょうどいい。遺跡を歩く旅のガイドブックにお勧めできます。
カラーで見やすい。盛りだくさん。でもすぐ読み終わる・・・
★★★★☆
写真や図版が盛りだくさんで、しかもオールカラー。
ページをめくっているだけで、楽しくなるつくりです。通勤でよむにはちょうどいいですが、出張にもっていくには少し物足りないボリュームですね。
内容については、井沢氏の「逆説」をベースにしているのですが、逆説シリーズの最初である古代編は1990年代前半に書かれたということもあって、その点で内容の古さが目立つのは否めません。
(井沢氏自身も邪馬台国の位置について本書で微調整していると言明されています)
特に井沢氏の大きなテーマである「怨霊」については、たしかに90年代前半は歴史学が無視してきたテーマだったかもしれませんが、その後、跋扈する怨霊―祟りと鎮魂の日本史 (歴史文化ライブラリー)や繁田信一氏の呪いの都 平安京―呪詛・呪術・陰陽師など歴史学者からも優れた怨霊研究が出されています。
先鞭をつけたという点では井沢氏の偉大さは揺るぎませんが、こうした近年の研究で実は怨霊の始まりは奈良時代以降という点でかなりはっきりしてきているのも事実です。
御存知のとおり、逆説シリーズはいまだ継続して今は江戸時代ですので、すでに終わった古代の研究動向について井沢氏がカバーしろ、と期待するのも無理があります。が、本書にこうした新しい視点が盛り込まれていないことはもったいないです。
厳しくいえば、かつて逆説だったが、10年前に「定説」となり、ところが20年たった今や、覆されるべき古い「定説」となっている、という印象です。
この点で、比較して読むと面白いのが、最近の研究成果を反映した最新の「逆説の古代史」とでもいえる恵美嘉樹氏の図説 最新日本古代史。くしくも11月に出たばかりなので、井沢古代史と恵美古代史が書店で肩を並べば注目されそうです。
古代編の次は、聖徳太子が出てくると思いますが、これも歴史学では「聖徳太子はいなかった論争」が盛り上がっています。これをどう裁くか、井沢氏の手腕に期待大です。