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仮装集団 (新潮文庫 (や-5-8))
価格: ¥900
カテゴリ:
文庫
ブランド:
新潮社
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息つく暇なしの徹夜本
★★★★★
高校時代、学校ぐるみで労音・労演に入っていて、安いチケットがまわってきたので、ときどき観に行っていた覚えがある。そのときはなぜこんな安い値段でこんな本格的な舞台が観られるのだろう、と不思議なだけだったが、本書で謎氷解! 労働者のための音楽・演劇で、要は政治が係わっていたのですね。どうりで「屋根の上のヴァイオリン弾き」とかソ連系の出し物ばかりだったはずだ!
個人的な謎氷解の面白さもさることながら、一見、政治とは関係のなさそうな芸術が巧妙に経団連や「人民党」の一癖もふた癖もある人々に利用されていき、真に芸術を愛そうとする者は最後に酷くも捨てられる。そのスリルたるや……。
こうした団体のパトロン(政治家)たちが、どうして演劇も音楽もまともに見聞していないのかずっと不思議だったのですが、当初はやはり、真の愛好家はいたわけで、設立時にだけ利用されるだけ利用されて、会員が拡大された後は「用済み」とばかり叩き出されたわけです。
「小説」とは断ってありますが、日本における、その後の芸術団体のうさんくささ(箱物優先で、まともな演劇学校ひとつ経営できない)をみると、ほぼ、「昭和以降」を予言して書かれた小説であったのだと思います。
映画、演劇が好きな人、プロデュース業に係わる人には最高におすすめの一冊です。人間ドラマもさることながら、クラシック音楽の描写が素晴らしい。文字から音が鳴り出します。
のだめカンタービレがヒットしている今、これもぜひ映画化してほしいっ。
文句なしにおすすめできる本
★★★★☆
「労働者のための音楽団体」をめぐる話なので、
時代的には今から読むと遠い過去の話ではあるが、
ここに書かれていることは日本社会の組織論として、
今でも通ずるものがあり、非常におもしろい。
おもしろいので本の具体的な内容には敢えてふれないけど、
「沈まず太陽」とか「白い巨塔」のように強烈な社会問題性を訴えるものではないけれど、
(書いた当初はそうではなかったのかもしれない)
日本社会の組織の中で翻弄され、また活躍する一介の人間ドラマとしては、
最高傑作のものでしょう。
文句なしのおすすめの本です。
短めだが期待通りの良作
★★★★☆
音楽団体のやり手企画マンが、団体の背後に隠れた政治性に翻弄されていく姿を描く。
「白い巨頭」の山崎豊子の作品。(長編が多い氏にしては)本作は比較的短めだが、期待は裏切らない良作。
資本主義-社会主義の対立などの時代背景を認識しておくと、より楽しめると思う。
現実的な虚しさ
★★★★☆
音楽鑑賞団体で素晴しい音楽を発信したい野心の主人公が、音楽鑑賞団体が純粋性を失い政治的色彩を帯びるに連れて、その渦に巻き込まれていく。主人公の純粋な野心から企画されたバイオリニストの来日公演以降、計らずも大きな意味を持つようになる。会員と運営者に乖離のある組織で孤軍奮闘する主人公のドラマは虚しさと儚さがある一方で現実的でもある。