Traveling Miles
価格: ¥1,191
カサンドラ・ウィルソンは個性的な歌手だ。一応ジャズ歌手ということになっているが、ジャズに限らず、ブルース、フォーク、ロックなど、さまざまな要素が彼女の歌には混在し、ジャズという枠内に納まりきらない多面性をもっている。
以前インタビューした時、本人はこう語っていた。「私は音楽を作る側にいるから、ジャンルなんて考えない。音楽は1つであって、カテゴリーとかジャンルなんて信じないの。洋服や食べ物と同じね。いつも同じ服を着ていたくないし、同じものを食べ続けるのもいや。ジャズ・シンガーと言われても、それはそれで一向に構わないけど、自分ではシンガー・ソングライターだと思っている」。
そういうスタンスの持ち主なので、このマイルス・トリビュート作も個性的だ。よくあるトリビュート作ではなく、マイルスのスピリットを自分の栄養にして、新しいヴォーカルの世界を模索している点が何といってもすばらしい。パット・メセニーやスティーヴ・コールマンなど、参加ミュージシャンの顔ぶれも多彩だ。(市川正二)