One Down One Up: Live at the Half Note
価格: ¥2,008
コルトレーンが伝説的な地位を取り戻した2005年の華々しい『ライブ・アット・カーネギーホール』(原題『Thelonious Monk Quartet with John Coltrane: At Carnegie Hall』。これは今まで“失われて”聴くことができないとされていた1957年のレコーディングからのもので、今は亡きジョン・コルトレーンは彼自身のカルテットの演奏のこのエキサイティングな発見によって、新世代のジャズファンに対してもあらためてその地位を固めた。1965年にニューヨークのハーフ・ノート・クラブで録音された『One Down, One Up』(邦題『ワン・ダウン、ワン・アップ: ライヴ・アット・ザ・ハート・ノート』)は、モンクのアルバムほどすばらしい発見ではない。録音された音は、ラジオ放送から録られたため、かなり未処理だし、モンクのアルバムが巨人同士のめったにない顔合わせだったのとは違い、60年代半ばのコルトレーン・フォーのライヴ・アルバムはほかにもあるからだ。それでもこれほどすばらしいものはない。コルトレーンのテナーとソプラノのサックスは容赦なく音を包みこみ、組み直し、わずかのモード奏法から壮大な盛り上がりを作り上げ、息継ぎの間さえおかない。28分間のタイトル曲や、23分の「My Favorite Things」(邦題「マイ・ファイバリッツ・シングズ」)(彼の生活の糧となった曲)、20分の「Song of Praise」(邦題「ソング・オブ・プレイズ」)のような大作の演奏には、熱中せずにはいられない。激しさと精神的な重みが増していくのを、その飾らない美しさを、バンドのがっちりとかみ合った歯車を、ピアノのマッコイ・タイナーが猛烈にたたき出す音、ドラムのエルヴィン・ジョーンズのめまぐるしい演奏、ジミー・ギャリソンの雄弁なベースラインを、ただ経験するだけでいい。メロディー重視なのは、コルトレーンが彼の短く終わってしまったキャリアの最終期に攻撃的な音のライヴをやめたせいだが、たとえ地図のない領域に攻めこむ場合にも、コルトレーンはリスナーを自分の手のひらから逃さない。(Lloyd Sachs, Amazon.com)