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安徳天皇漂海記 (中公文庫)

価格: ¥720
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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彼の最高傑作? ★★★★★
源実朝からはじまり、マルコポーロで終わる。幻想的な物語。

山本周五郎賞を受賞した作品だが、そんなことを抜きにしても抜群に面白い。

前三作に比べると、描写も大分おとなしいが、その分、心にしみる文章となっている。

今年読んだ本の中では、もしかしてベスト1かもしれない。なんで今まで読まなかったんだろう。
ギリシア悲劇を思わせる ★★★★★
壇ノ浦で入水した八歳の安徳天皇が、琥珀色の玉に封じられ、魂の平安を求めて鎌倉へ、次いで南宋へ、最後に黄金色の蜜の滴る島、ジパングへたどり着く。
美しく、荘厳な悲しみが満ちている平曲の調べに乗って、豊かなイマジネーションの世界が広がる。
ただ美しいだけのファンタジーではない。この小説には、しっかりした背骨がある。ますらおぶり、とでも言いたいような。
運命という言葉を軽々しく使いたくはないが、そう言うしかない。人間は、生まれる時代も、場所も、自分では選べないのだから。
ここに描かれているのは、人間同士の小さな葛藤ではない。運命という巨大な波に呑みこまれようとしながら、懸命に自らの生をまっとうしようとする人間の姿だ。
安徳帝をはじめ、歌人にして征夷大将軍の実朝も、南宋最後の少年皇帝も、マルコ・ポーロも、権勢の絶頂にあるクビライ・カーンにさえも、運命にひとり対峙する者の厳しさがある。

ギリシア悲劇を思わせる。

お涙頂戴のメロドラマに食傷した人、ひとまわりスケールの大きな感動を求める人にお勧めする。
あまりの美しさに落涙するを禁じ得ず ★★★★★
本書は、澁澤龍彦の『高丘親王航海記』に対する盛大なオマージュなのですが、『高丘親王〜』をころりと乾いた真白い真珠とすると、本書はさながらとろりと蕩けるの蜜の如し。

前半では、鎌倉最後の将軍、源実朝に近衛として仕えていた語り手が、主である実朝とそれを透かして見た安徳天皇について、和歌を交えてやわらかく語っています。
全体的にほの暗く、しっとりとした語り口から見える実朝の生涯は、壮絶にして静謐。
要所要所に挟まれる実朝の詠歌が、物語と絡み合ってなんともいえぬ美しさをかもし出しています。

後半は、大元帝国の巡遣使であるマルコ・ポーロが見た、南宋最後の幼帝、趙(ちょうへい)と、はるかな海へと流れついた安徳天皇の鎮魂にいたるまでが、絢爛たる文章で綴られています。

夢の中で睦まじく戯れる二人の幼帝や、偉大なる帝国の覇者クビライ・カーン、そして見聞役のマルコ・ポーロと、随行する鄭文海。
様々な人物が色鮮やかに、生き生きと描き出されています。

そしてなにより、最後に出てくるジパングの描写は圧巻。


歴史の中に、途方もない幻想を描いた著者の想像力もさることながら、随所にちりばめられた玉石、赤い水晶、少年、水の国、うつろ舟、鳥、そして蜜といったイメージが『高丘親王〜』をはじめとする澁澤の世界を髣髴とさせ、最後まで引き込まれるように読めました。

とてもとても面白かった。

ぜひとも、蜜を舌に含むが如く、ゆっくりと味わうべし。
澁澤龍彦を思わせる秀作 ★★★★☆
著者自身が参考文献にあげている、澁澤龍彦『高丘親王航海記』を思わせる、幻想的な時代小説です。『高丘親王航海記』ほどあくは強くないけれど。実朝、鴨長明、後鳥羽上皇、安徳天皇、クビライ・カーン、マルコ・ポーロ、そしてあの人も登場します。
『平家物語』『吾妻鑑』『明月記』などを縦横に使い、迫力ある筆致です。
安徳天皇、波に揺られてどこへ往く ★★★★☆
源平対立、
元と南宋の戦い、
そしてマルコ・ポーロはじめ西洋と東洋の接触。
洋の東西を問わぬ伝奇要素のオンパレード。

南宋滅亡と平家滅亡をフューチャリング。
言われてみれば、確かに共通点は多いけど、
サラッと書いてしまうところが著者のスゴイとこ。

合間におりこまれる実朝の和歌や平曲(平家物語)、
その独特のリズム感で物語の海へ引きずり込んで行く。

そして、エンディングに待つ「黄金の国」。
アラミタマをも鎮める極楽の島の秘密とは。
マルコ・ポーロが見るものとは。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらはす。
奢れる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。

洋の東西を問わぬ、普遍・不変の真理。
わずか8歳にして海に沈んだ帝の魂に安息は訪れるのか。
魂の流れ着く先、是非見届けてやってください。