金剛出版
★★★☆☆
近年警察庁の報告によると,わが国の自殺者は,3万人を超え、これは交通事故死の3倍にのぼる。
著者はカウンセラーとしての豊富な経験を基に,自殺企図者へのカウンセリングはもとより,周囲の人々への援助,医師との連携,ピア・サポート等,「自殺の危機介入」におけるカウンセラーの役割と対応の技術をわかりやすく紹介する。そして本書の大きな特徴は,クライエントが自殺した際の治療者の心理的対応を重視していることである。そして具体的な技法として遺された人々へのグループワーク,自殺のアフターケアとして最近注目されている,ディブリーフィング(debriefing)について実際の実施方法やプロセスを具体的に解説している。
自殺を理解し,カウンセラーや家族が危機的状況に対処するための実践的臨床書である。
心の救急箱☆トラウマと教育臨床
★★★★☆
自殺学で有名な精神科医・高橋祥友氏のお墨付きもある下園壮太氏が初めて書いた本です。この本の注目すべき点はディブリーフィング(←簡単に言うと、危機などが起こったあとに行うグループ療法)について述べられている点です。そしてフィクション(それも割とリアル)ですが、どのようにして行われるか事例をあげているので、参考になります。下園氏は感情のプログラム、特にfight or flight反応のような難しい言葉を「驚き→闘争・逃走プログラム」として説明していますが、その説明の仕方が上手いと思います。ただ、「うつ病」や「うつ状態」の違い、PTSD(およびASD)などはあまり詳しくない方がこの本を読んでも混乱したりわかりづらいと思いますので(あくまでもカウンセラーが書いた本です。)、それらの専門書を併読されると良いでしょう。 主にカウンセラー向けに書かれた本ですが、自殺の問題が身近になった昨今では、一般の方が読んでおいても何かの足しにはなるはずです。