高校の歴史の授業、あるいは予備校・大学の講義で話を聞いたのですが、手塚治虫氏の曽祖父あたりの史実を基に書いているらしい。実際手塚良庵は実在するし、箕作麟祥の数代先祖の箕作阮甫などが登場しているのですが・・・。
幕末という激動の時代を志士や大名の視点から描いている小節や漫画をこれまでに結構な量を読みこなしてきました。例えば、「竜馬が行く・歳月・翔ぶが如く・お~い竜馬・西郷と大久保・酔って候」等です。
しかし、これはこれで充分テゴタエを感じる作品群ですが、藩医や町人に視点が合わされていてもいいのではないかと思う人もいるだろう。
それに答えてくれるのが、この作品ですね。
例として司馬遼太郎でいうならば「俄」などのような視点の持ち方ですよね。当時の人々の日常の営みも同時に感じることのできるような視点と描写が好きです。
第一巻では、手塚良庵が大阪(適塾)に旅立ったつ頃までを描いています。
良庵はすぐに女性に手を出す軽い性格(よくいえば柔軟な性格)、一方、万二郎は一本気で不器用な性格(悪く言えば頑固者)。このふたりの性格の違いが物語全体にわたって重要な役割を果たしています。
物語の後半、良庵が西郷隆盛に言うセリフ、
「歴史にも書かれねえで死んでったりっぱな人間がゴマンと居るんだ……そんな人間を土台にした歴史に残る奴などゆるせねえ。」
とても印象に残る言葉でした。作者の思いが伝わってきます。