大きいおばあちゃんのところで過ごす夏休み。芋掘りをしたり、昔の話をしてもらったり、泳いだり…。そして「まんだこいへ（またおいで）」と見送ってくれたのに、次に会ったときは白い煙になって空に上っていってしまう。お葬式の夜、空に大きなほろのような雲がかかり、雲の切れ間から、丸い月が出てきた。それは「まんだこいへ」と言いながらやさしく照らしてくれる大きいおばあちゃんの月。

   大きいおばあちゃんの笑顔は印象的で、「ふるさと」そのもの。「ほろづき」に笑顔の輝きが重なる。絵は細やかに描き込まれ、温かくて素朴。どのページもどこかで見たことのあるような懐かしさを感じてしまうのは、誰もが抱く心のふるさとが描かれているからかもしれない。特に、みんなで芋掘りに行く山道の絵は、心を元気にしてくれる。目でゆっくりと「ふるさと」を味わうことのできる絵本。対象年齢は幼児から小学生向け。（加久田秀子）