「破壊」による危険も意識した上で、それを創造に結びつけるための心構えが説かれている気がしました。子どもが悪さをするのには、本人の無意識の中に状況を変化させたいという欲求があるのでしょう。それを親として、または指導者として禁止するだけでは、その子の中に芽吹く新たな価値をむしりとってしまう。それも親の善意の元に。
この本はそんな親達に警鐘を鳴らしてくれているように感じました。
河合センセイらしく、その対応にはマニュアルがなく当事者達が解決していかなければいけないと言っています。また、その過程から得られることこそが大切であることも。
私の子もかわいいウソをつき始めました。この本を読んでみて、自分がどのように対応するのかを客観的に見るようになりました。こんなふうに感じさせる本はなかなか無いと思います。
悪、すなわち反価値と看做されているものやことに、どれほどの意義があるかを再発見させてくれる。善、それだけではうすっぺらい。たとえば「よい子」は人間的に豊かか。うそ、盗み、秘密などを自己消化してこそ、人間的にバランスのとれた大人になれるのではないか。死の際を見切った人間がより豊かな生を生きるように。
ここには逆説がある。あるいは弁証法がある。「にもかかわらず」。これが宗教の本質だ。「死と再生」の秘密だ。
創造は破壊を含んだものである。攻撃や暴力、性、引き蘢り(ネクラ)など、悪は抑圧されている。悪の抑圧は再生への道を閉ざし、人間を創造しない。