感動のラスト
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ようやく帰国したバルサを待ち受けていたのはタンダが徴兵によって戦地へと連れられていったという事実でした。
無情にも戦争は始まり、戦を忘れた新ヨゴ皇国はタルシュ国に一方的に蹂躙され、多くの兵が死んでいきます。バルサはタンダを探しに戦地へと向かいます。そしてその時初めて自分の事をタンダの「つれあい」だと言います。さらりとした書き方ですが、長い年月タンダとの関係について一歩踏み出せなかったバルサが言ったこの一言は、彼女の心が決まったことを表していて涙が出ました。
そして傷つき死に瀕したタンダの元に辿り着いたバルサを、まるで逆に慰めるように背中をなでるタンダの限りない優しさに彼のバルサへの深い愛情を感じます。
一方チャグムは敗戦色濃厚な自国を救わんととうとう自ら剣を手にとって戦地に立ちます。新ヨゴ皇国の穢れなき皇子である自分を捨て、国を救う為に穢れを厭わない皇子となるチャグム。そして国を救う為であっても決して穢れを許さない父である帝。この親子の決して和解することがない関係が人間というものの難しさを痛切に感じました。
戦は終わりますが、新ヨゴ皇国には大きな傷が残ります、それでもチャグムは神の子でなく一人の人間として新ヨゴ皇国を背負っていく決心をします。そしてバルサとタンダも、他の多くの人々も、家や店を失くしても、愛する人々と共にまた生きていこうとする姿にただただ胸を打たれました。
もっと彼らを見ていたかった。
★★★★★
善は必ずしも善ではなく、悪は必ずしも悪ではなく、
終わりは、新たなはじまりでもある。
タルシュ帝国にも彼らの事情があり、帝は良かれと信じる道をひたすら守る
もう一人の統治者でもあった。
都の滅亡は、重ねられたもう一つの世界(ナユグ)の産みの苦しみだった。
冬と夏があるように、四季のように、お互いに影響を及ぼしながら
くるくるめぐる二つの世界。
相対する存在を「単純悪」「不要のもの」としない柔軟な概念が好きです。
一つの価値観に帰結しない、が故に読者の脳裏に余韻と広がりを与えるラスト。
根底に流れる感覚が実に女性的で東洋的なファンタジーだと思いました。
天と地・・三冊では、バルサとチャグムが再会し旅をします。
二人が一緒に居ると、どんな苦難に遭っても安心していられますね。
ほんと、バルサは最強の母さんです(笑)
たおやかで愛を注ぐ理想の母親、強く、子供の成長を信じて見守る母親。
どちらも真に子を思う母です。
ここにも二つの概念が存在しますね。
戦いに翻弄される草兵、傷つき心折れたタンダ。
ラストの、変わらない草ぼうぼうの庵や、したたかな民たち。
人の営みと歴史が息づいた物語でした。
なんだか感想がとびとびですみません。
論点をどこに絞ったらいいのかわからないくらい、最初から最後まで素晴らしかった。
全編を通じて蓄えられたエネルギーが奔流となって、作者の筆を通して、
この一冊に一気に放出された感じ。内容が濃かったです。
小学生の子供と、親子で読破しました。
ハードカバーなのでちょっとずつ買って・・・購入日には取り合いに
なったほど、みんなで楽しみにしていました。
大好きなシリーズを読み終えて寂しさを感じました。
もっと彼らを見ていたかった。
終わってしまった。。。
★★★★★
図書館でハードカバーを読みました。
自分だけなら文庫を待ってもよかったのかもしれないけれど、
いつか自分の子供に読み聞かせたいと思って軽装版を。
挿絵も楽しめるし、寝ながらも読めるしよかったと思います。
子供の頃に読めなかったのは残念だけれど、大人になって
「正しいのはひとつだけじゃない」とか「正しいことを
するためにあえて進まなければならない道がある」という
ことを実感してから読んだことで、ただドキドキワクワクの
お話にはないものを考えさせてくれるシリーズでした。
圧倒的な完結
★★★★★
ついに、守り人シリーズ完結です。(ハードカバーは既刊ですが…)
圧倒的な完結です。
これ以上はないっていうような素晴らしい完結でした。
壮大なスケールと人の心の繊細で深い描写に引き込まれ、
3部作ページをめくることももどかしく本当に感動しました。
本当に守り人シリーズが日本に生まれてきたことを日本人として誇りに思います。
私の文章力が足りず、語りつくせぬもどかしさがありますが、
いろんな人に読んでもらいたい。
私も心が乾いている時、前を向いて歩くことを疲れた時、
楽しい時、幸せな時、いつもで読み返したいと思います。
素敵な本に出会えました。ありがとう。
そして彼らの物語は続いていく
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怒涛の作品がフィナーレを迎えました。
最終のこの作品は3部作ですが、その量の多さを全く感じさせず、飽きさせず、あっという間に
過ぎていってしまいます。
未曾有の危機に直面した新ヨゴ帝国を自分の信じる道で救うために多くのことをやりとげ、
前に進んでいくチャグム。そして彼を救うために危険をいとわず助け続けるバルサ。
多くの冒険を経て、そして多くの協力者を得て、多くの人の血を流しながら、チャグムは
新ヨゴを属国になる危機から救います。
父王との再会と別れは、ジュニア小説とは思えない深みがあります。
そして冒険は終わりました。
が、登場する人物の人生の物語は続きます。
バルサは愛する人たちとの生活と冒険を続けます。
チャグムは王としての冒険をはじめます。
そう、それまでに経験した多くのできごとと、そこから得た多くの悟りを胸に
英知に満ちた治世を実現することでしょう。
バルサとチャグムは二度と会うことはない。でも、会うことはなくとも、
お互いの信頼と尊敬は消えることはないのです。
すばらしい物語をありがとうございました。