それで…私たちクラシック・ファンにどうしろと言うの?
★★☆☆☆
いろいろクラシック音楽業界の裏話が分かったし、「まともな商売をしろ!」と提起する意義も分かる。いわば内部告発本であり、"業界の人にぜひ読んでほしい本"です。…で、私たち素人のクラシック・ファンはどうすればいいの?結局今売られているCDのどれを買えと言うの?特に私のような、CDの微妙な音質なんか分からない人間は…なんか、今までいわゆる評論家の方々が推す「名盤」を数えきれないほど聴いて満足してきた自分自身の音楽人生が否定されたようで、今すごく不愉快な気分。そして、「名盤」をバッサリ斬り捨てている平林直哉氏が推すある盤を購入して聴いてみると、なんだ全然特徴もなくつまらないジャン。もうどうしたらいいの?…例えば、吉井亜彦氏の名著「名盤鑑定百科」のように、今市場に出ているあらゆるクラシックCDについて音質評価でもしてくれていればCD購入の参考になるし買う価値がある。しかし氏が様々な著で評している盤は多数がすでに廃盤のもので、いまや何の参考にもならない。さらにはホントかどうかも怪しい「業界の噂」?どうでもいい、全く必要なし!…平林氏に一つ言いたい。あなたが大好きなクルト・ザンデルリンク氏が引退後にお孫さんへのプレゼントとして緊急リリースし話題となったベルリン市政750年祝賀演奏会のベートーヴェン「合唱」。誰が聴いても分かる、プロとしては信じられないミスが2箇所、そのまま収録されている。私は聴いていて切なくなる。この歴史的イベントでの痛恨のミスがそのまま全世界に出版されるなんて、当のオケメンの気持ちは…私の意見は、どんな手を使っても、たとえ他のオケの演奏を繋ぎ合わせてでも、たとえ多少の音質低下があっても、もし修正できるのであればしてあげてほしいと思う。「お見合い写真のお化粧」みたいなものではないか…私は別に今の音楽業界がやっていること、あなたが指摘している問題点をすべて許容すると言っている訳じゃない。時と場合、程度によっては容認する、ということです。平林氏はどう考えますか。…この著のような提言はあくまで業界内で主張して、業界を変えるよう努力して下さい。そして私たち一般のクラシック・ファンには、"今"出版されている、購入しやすい「現代の名盤」をどんどん紹介してくださいよ。「盤鬼」なんて呼ばれているくらいなら"今"どんどん出版されている盤もたくさん聴いてるんでしょ?
これは、クラシックファン必読の書です!
★★★★★
初版は2000年11月発行ですが、私は、最近購入し、その中身の濃さ、驚くべき事実が書かれています。5人の共著ですが、第1章の平林直哉氏の著述が凄く、「そういうわけだったか」と思い当たる事が沢山あるのです。特に、現在多い「ライブ録音」という表示の殆どが、編集で音質を悪くさせている事。過去の名演をノイズ除去したために、音が格段に劣化している事など、LPの音に馴染んできた人なら、「?」と思うCDが多い筈。その真相を赤裸々に公開しています。昔からのクラシックファンはもとより、これから聴こうという人は、是非読んでおいた方が良い内容です。私にとっては、この第1章だけで、充分元がとれたと感じます。第2章以降は、第1章の衝撃に比べれば、おまけのような内容です。「第1章」の60ページだけでも貴重な証言です。メーカーに猛省を促したくなる事必至の事実は、読後、しばらくは、「信じたくない!」と思いましたが、該当するCDをよく聴けば、事実である事がはっきり解ります。しばらくはブート盤を探そうか、と思う位、「正規盤」のでたらめさにショックを受けるでしょう。是非読む事!